南紀・白浜温泉(和歌山県白浜町)は「紀の温湯」として古代から知られ、持統天皇や天智天皇なども湯治に訪れた名泉。有馬温泉、道後温泉とともに「日本三古湯」のひとつにも数えられています。紀伊半島には活火山はなく、白浜温泉は非火山性の温泉です。ではなぜ、活火山のない南紀に高温の温泉が湧くのでしょう?
南紀の地下10km〜15km付近に熱源となる高温部が!

白浜温泉の温泉のメカニズムが解明されたのは、意外に近年で、平成16年のこと。
核燃料サイクル開発機構(現・日本原子力研究開発機構)の研究グループ(東濃地科学センター地質環境研究グループ)が、地下電流の流れやすさを使って、南紀の地下10km〜15km付近に温泉の熱源となるような高温部分があることを発見したのです。
「紀伊半島下に沈み込むプレートからもたらされた深部流体が非火山地帯の温泉の成因に関与」という何やら難しいレポートが出されていますが、
(1)地磁気・地電流の観測から温泉周辺の地下 10~15km には高温流体と考えられる低比抵抗層を確認
(2)低比抵抗層の下位のプレートの上面には低周波微動が発生
(3)低周波微動は、プレートから脱水した深部流体の上昇を示唆することから,紀伊半島南部の高温泉の原因(熱源)は、マグマではなく、深部流体によって運ばれた地下深部の熱に起因
と解説しています。
白浜温泉の地中数十kmには南海トラフ地震を引き起こすフィリピン海プレートがありますが、そのプレートが沈み込むことで、地下の高温度の熱水が絞り出されます。
その熱水を熱源にして地下10km〜15km付近が温められていることがわかったのです。
地表から雨水などを源とする地下水が浸透し、加熱されて温泉が誕生しますが、この地中の高温部分で地下水が温められ、断層などの亀裂に沿って地表に湧き出したのが、泉温78度の白浜温泉です。
白浜温泉よりも高温(92.5度)の温泉が湧き出す熊野詣(くまのもうで)の湯垢離(ゆごり)の地、湯の峰温泉も、同じメカニズムで湧く温泉です。
湯の峰温泉に関しては、地下深くにマグマが存在すると推測されてきましたが、この研究によってマグマ説は否定され、「マグマではなく地下深部から供給された高温の流体が存在しているもの」と解析されたのです。

活火山のない紀伊半島に、白浜温泉が湧く理由とは!? | |
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