立山黒部アルペンルート、立山連峰を貫く、立山トンネルを走行するトロリーバス(室堂駅〜大観峰駅)。長野県側、関電トンネルのトロリーバスも廃止され、現在日本で唯一のトロリーバスですが、2024年11月末での運行終了が決まっています。どうしてトロリーバスが消えてしまうのでしょう?
立山トンネルを28年走り続けたトロリーバス(無軌条電車)
正式名称は、立山トンネルトロリーバス。
トロリーバスは、路面電車とバスの中間的な存在で、トロリーポール(集電装置)で架線に流れる電気をとってモーターで動くバスです。
日本国内では昭和27年5月20日、東京都営バスの今井橋〜上野公園間が開業、さらに昭和30年6月1日 、池袋駅〜千駄ヶ谷4丁目、昭和30年12月27日、千駄ヶ谷4丁目〜渋谷駅(延伸)、昭和31年9月21日、渋谷駅〜品川駅、昭和32年1月12日、池袋駅前〜亀戸4丁目、昭和33年8月18日、池袋駅前〜浅草駅とトロリーバス網といえるほどの路線が東京中心部をカバーしていました。
これは、当時のガソリン不足を補うものだったため、昭和43年9月30日に全線廃止しています。
トロリーバスの各営業所の名前は、今井無軌条電車営業所というように「無軌条電車」というのがトロリーバスの正式名。
鉄道事業法でも鉄道にあたるため、立山トンネルトロリーバスの室堂駅は、標高2450mで、日本最高所の鉄道駅、そこで味わう「立山そば」は、日本最高所の駅そばということになるのです。
立山黒部アルペンルートの長野県側、後立山連峰を貫く関電トンネル(扇沢駅〜黒部ダム駅)も昭和39年からトロリーバスが運行していましたが、平成30年11月30日に運行を終了、電気バスに置き換わっています。
最後まで残った立山トンネルトロリーバスは、立山黒部貫光が公害防止、環境保護の観点からディーゼルバスを廃止し、平成8年4月23日にトロリーバスを導入したもの。
立山トンネルの天井に設置の架線には直流の電気が流れていますが、モーターは交流で動くため、トロリーバスの心臓部は電気を交流に変換し、動力源となるモーターを制御するVVVFインバータ装置。
この機械が実はデリケートな機械で、日本で唯一ここだけで走るという特殊な車両のため、交換する部品の調達もままならない状況です。
現在、8000形(大阪車輌工業製)と呼ばれる8台の車両で、観光シーズンにはフル稼働の状況。
加えて、「ホテル立山」宿泊者向けの「ご来光バス」も早朝に運転されるので、5人の整備担当者が頭を悩ませながらの維持管理も大変です。
車両の更新はなく、平成8年4月23日の運行開始から28年、走り続けてきたトロリーバスで、部品調達も困難とあってそろそろ耐用年数に。
すでに電気バスが普及しているので、運行する立山黒部貫光としては、「日本唯一のトロリーバス」という以外にトロリーバスにこだわる必要性はなく、安全運行のためにも電気バス転換に踏み切ったというわけです。
「日本最高所を走る電気バス」の誕生ですが、室堂駅、大観峰駅が「日本の鉄道高所駅」1位と2位の座を失うことに。
日本で唯一のトロリーバスは、どうしてなくなってしまう? | |
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