富士火山帯とはもう呼ばない! 日本列島の火山帯は2つしかない!

千島火山帯、那須火山帯、鳥海火山帯、富士火山帯、乗鞍火山帯、白山火山帯、霧島火山帯、かつて試験に出たこともある日本の火山帯ですが、実は地理的な括りで、火山学的には根拠に乏しいことから、近年では東日本火山帯と西日本火山帯に分けられるだけになっています。いったいなぜでしょう?

7つの火山帯は「星の並びの星座」くらいの意味だった

何火山帯に属しているかは、試験に出るほどの意味はなかった!

かつて日本列島の火山は、知床半島の火山は千島火山帯、富士山は富士火山帯、北アルプスの焼岳は乗鞍火山帯などと分けられ、テストに「何という火山帯でしょう?」という問題が出された時代も。
現在では中学や高校の教科書からも富士火山帯などという名称は消えていますが、今でも堂々と、「日本列島の火山帯は7つに分けられます」と解説するサイトもあります。

実はこの7つの火山帯に属さない、阿武単成火山群(山口県萩市/2003年、気象庁が活火山に指定)などの「単成火山」と称される火山も見つかり、この7つに分けられた火山帯が、単に「帯状に連なる火山密集帯」であることが明らかになってきたのです。

教科書から消えた理由は、(1)各火山帯の境界が曖昧、(2)火山を生むマグマの発生の仕組みから考えるとあまり意味のない分類であること、(3)科学技術の発達で、年代測定、地質調査が進んだ結果、火山帯に属さない火山が見つかったことが挙げられます。

つまり7つに大別された火山帯は「実は夜空の星の星座のようなもの」と解説する火山学者の解説が明快です。
単なる地理的な区分で、火山学的には意味がなかったということに。
それをせっせと覚えて試験に備えていた時代があったというわけです。

重要なのは火山を生み出すプレートとの関係性

実は、世界に存在する火山の3分の2が環太平洋火山帯にあり、その多くが収束プレート境界帯(プレート同士が接近している境界)の沈み込みによりできたものです。

日本列島には、太平洋プレートとフィリピン海プレートという2枚の海洋プレートが沈み込んでいます。
この沈み込むプレートが深部でマントルの一部を溶かし込んでマグマを生み、それが上昇してマグマ溜まりを生み、爆発して火山体が誕生します。
つまり、日本列島とその周辺域の火山の分布は、基本的には太平洋プレートやフィリピン海プレートの沈み込みに伴なうマグマの生成に支配されているといえるのです。
富士山もフィリピン海プレート、ユーラシアプレート、北アメリカプレートという3つのプレートがぶつかり合う境界付近にありますが、それゆえに巨大なマグマ溜まりがあり、大きな火山体が生まれたのです。少し難しくなりますが、富士山は「ユーラシアプレートと伊豆半島をのせたフィリピンプレートが衝突、沈み込んでいる場所に、東側から太平洋プレートが沈み込んでいるという地学的に複雑な場所にできた火山」というのが火山学的な解説。

こうした火山誕生のメカニズムを考慮して、現在では7つの火山帯分類を使わず、太平洋プレートの沈み込みが関係する「東日本火山帯」とフィリピン海プレートが関係する「西日本火山帯」に分けているのです。

こうして導かれた火山学的な分析から、海洋プレートの沈み込みと並行な複数の火山帯を同じ火山帯として扱い、千島・那須・鳥海・乗鞍・富士火山帯は太平洋プレートが関係する「東日本火山帯」、白山火山帯、霧島火山帯はフィリピン海プレートが関係する「西日本火山帯」に大別されるという結果になったのです。

ちなみに、プレートテクトニクスの登場以来、「火山帯」という言葉自体、あまり使われなくなっているとのこと。
「死火山」も「火山帯」も消える運命なのかもしれません(現在、休火山、死火山という分類はなく、活火山以外に区分されています)。

富士火山帯とはもう呼ばない! 日本列島の火山帯は2つしかない!
掲載の内容は取材時のものです。最新の情報をご確認の上、おでかけ下さい。

 

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