気象庁が導入を決定の「火山灰警報・注意報」は、富士山の噴火が念頭に!?

気象庁は、大規模な噴火で広い範囲に多量の火山灰が降ることを想定した「火山灰警報」を導入する方針を固めています。全国111の活火山を対象に、火山灰の降り積もる量により、「火山灰注意報」、「火山灰警報」を発令するものですが、実は迫りくる富士山の噴火が念頭にあるようです。

数年後に導入される「火山灰警報」の意味を理解し、行動を

気象庁では、2025年4月に気象庁の検討会(座長は東京大学・藤井敏嗣名誉教授=マグマ学や岩石学の第一人者)の報告書がまとまったことを受け、「火山灰注意報」、「火山灰警報」の導入を進めています。

火山灰は、火山の噴火数分後から日常生活に影響を及ぼす被害が発生し、時間の経過とともに被害が拡大(生命に危険を及ぼす可能性も)。
主に風下側の広範囲に被害が広がることが想定されますが、風向きなどの影響により対象範囲は流動的としています。
避難に関しては、できる限り降灰域内に留まって自宅などで生活を継続することが基本ということです。
ただし、降灰が30cmを超えると木造住宅は倒壊の危険があるため、状況によって命の危険がある場合は降灰の影響域外への移動を検討としています。

想定されるのは、やはり首都圏にも大きな影響がある富士山の噴火。
降灰量が0.5mm程度の微量で、鉄道の運行ができなくなり、降雨時3mmで停電が発生(灰が電線につながる部品に付着・ショート)、降雨時3cm(乾燥時10cm)で自動車の運転ができなくなるため、交通も完全にマヒします。
富士山が噴火し、西南西の風が吹き、雨が降るのが想定する最悪のケースで、東京都心も3cmの降灰で都市機能は失われます。

スマホなどの電波も基地局のアンテナに灰が付着し通信障害が生まれ、水道も水質悪化、さらに停電とともに断水が発生します。

  • 注意報:降り積もる火山灰の量が0.1mm以上3cm未満と予想される場合
  • 警報:降り積もる火山灰の量が車が走行できなくなるなど大きな影響を及ぼす3cm以上
  • 厳重な警戒:木造住宅の倒壊のおそれがあるとされる30cm以上

想定される富士山の噴火は、いつ噴火してもおかしくないほど切迫しています。
最後の噴火である宝永4年(1707年)の宝永大噴火は、プリニー式噴火と大量の火山灰が特徴で、100km以上離れた江戸の町でも火山灰が降り積もっています。
「よべ地震ひ、この日の午時雷の声す、家を出るに及びて、雪のふり下るごとくなるをよく見るに、白灰の下れる也。西南の方を望むに、黒き雲起こりて、雷の光しきりにす」(新井白石『折たく柴の記』)。

記録によれば、火口から10km離れた静岡県小山町で3m、50km離れた神奈川県伊勢原市で30cm(木造の家屋倒壊の危険)、120km離れた千葉県市原市でも8cmという警報級の降灰となっています。

このことから富士山がもし噴火したら、東京でも数cmの降灰というのは十分に想定される量ということに。
鹿児島市周辺では、桜島降灰予報が出されているので、日常的なことですが、首都圏などでは未知なる世界。
いざというときに慌てないためにも火山灰への準備が必要ということに。

実は、新しい火山灰警報は、数百km以上離れた範囲に影響する大規模な噴火を想定して策定しています(噴火警報の「警戒が必要な範囲」は火口から数キロ以内)。
将来、現代人が経験したことのない大噴火は、日本のどこかで確実に発生。
その時に備えての火山灰警報ということに。
気象庁は数年以内に火山灰警報を運用することを目指しているのです。

富士山・宝永大噴火をを描いた絵図『夜乃景気』
気象庁が導入を決定の「火山灰警報・注意報」は、富士山の噴火が念頭に!?
掲載の内容は取材時のものです。最新の情報をご確認の上、おでかけ下さい。

 

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