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近露王子

近露王子

世界文化遺産「紀伊山地の霊場と参詣道」の構成資産となる熊野古道・中辺路(なかへち)。古道には俗に「熊野九十九王子」(くまのくじゅうくおうじ)と呼ばれる社が点在しますが、田辺市中辺路町近露にある近露王子(ちかつゆおうじ)は、滝尻王子に次ぐ準五体王子として、最も早く設けられた王子のひとつです。

熊野古道中辺路の宿場として栄えた地

大阪本王子から箸折峠を越えて山を下り、日置川(ひきがわ)を渡ると近露王子。
近露王子は、大坂本王子と比曾原王子の間、熊野本宮への中間点であることから王子前には旅籠(はたご)も多く、宿場としても栄えた場所です。

建仁元年(1201年)、後鳥羽上皇の熊野詣に随行した藤原定家の『後鳥羽院熊野御幸記』にも、「すぐに輿(こし)に乗り出発し、川を渡り、すぐ近露王子に参る。次にヒソ原、次に継桜、次に中の河、次にイハ神とのこと」と記されています。

承元4年(1210年)、修明門院(藤原重子=後鳥羽天皇の寵妃)の熊野参詣に同行した藤原頼資の『修明門院熊野御幸記』には、5月1日の記事に「朝、御浴・御拝・御禊。終わって出御。王子(近露王子)に参御。次に檜曾原・継桜・中川など王子を例のごとく御参」とあり、参詣前に身を清めていることがわかります。

平安時代には「近湯」、「近津湯」と記され、承安4年(1174年)の藤原経房(ふじわらのつねふさ)の日記以降は、「近露」となっています。
永保元年(1081年)、熊野に参詣した藤原為房(ふじわらのためふさ=後三条・白河・堀河・鳥羽天皇に蔵人・蔵人頭として仕えた)は川水を浴びた後、「近湯」の湯屋に宿泊とあるので(『為房卿熊野参詣日記』)、温泉が湧く「近湯」・「近津湯」が地名の由来とも推測できます。

近露王子は日置川の橋のたもとに位置していますが、「近露の水は現世の不浄を祓う」(『熊野縁起』)ということから若一王子権現社への参拝前にはこの川で潔斎も行なわれていたのです。
往時には若一王子権現社の神木として杉の巨木がありましたが、明治初期に若一王子権現社(江戸時代までは神仏習合)が近野神社へ合祀され、森も伐り払われて現在はその跡地に石碑が立つのみとなっています。

近露地区には「民宿ちかつゆ」に併設された共同湯「上小野温泉ひすいの湯」(ナトリウム-炭酸水素塩・塩化物泉/かけ流し)で汗を流せるほか、大型ドライブイン「古道歩きの里 ちかつゆ」で食事・土産購入、古道歩き体験の説明(有料)が可能なほか、中辺路ゆかりの画家を中心に収蔵展示する「熊野古道なかへち美術館」(田辺市立美術館の分館)もあります。

近露王子~継桜王子は、3.9km、所要1時間10分。
近露王子から大阪本王子方面へ15分ほど歩けば、中辺路のシンボルともいえる牛馬童子像があります。

近露王子
名称 近露王子/ちかつゆおうじ
所在地 和歌山県田辺市中辺路町近露
関連HP 田辺観光協会公式ホームページ
電車・バスで JR紀伊田辺駅から龍神バス発心門王子方面行きで1時間10分、近露下車すぐ
ドライブで 阪和自動車道南紀田辺ICから約35km
駐車場 近露王子公園駐車場(34台/無料)
問い合わせ 田辺観光協会 TEL:0739-26-9929/FAX:0739-22-9903
掲載の内容は取材時のものです。最新の情報をご確認の上、おでかけ下さい。

牛馬童子像

世界文化遺産「紀伊山地の霊場と参詣道」の構成資産の熊野古道・中辺路(なかへち)。箸折峠(はしおりとうげ)の宝篋印塔(県指定文化財「近露の宝塔」)近くにある石像が、中辺路のシンボル的存在となっている牛馬童子像。牛馬2頭の背にまたがった牛馬童子

比曽原王子

和歌山県田辺市、世界文化遺産「紀伊山地の霊場と参詣道」の構成資産となる熊野古道・中辺路(なかへち)、熊野九十九王子(くまのくじゅうくおうじ)のひとつで、近露王子(ちかつゆおうじ)と継桜王子(つぎざくらおうじ)の間に位置するのが比曽原王子(ひ

継桜王子(野中の一方杉)

和歌山県田辺市中辺路町、世界文化遺産「紀伊山地の霊場と参詣道」の構成資産でもある熊野古道(国の史跡「熊野参詣道」)・中辺路(なかへち)にあるのが継桜王子(つぎざくらおうじ)。熊野九十九王子社(くまのくじゅうくおうじ)のひとつで、社(江戸時代

熊野古道なかへち美術館

和歌山県田辺市中辺路町、熊野古道・中辺路(なかへち)、近露王子近くに建つのが熊野古道なかへち美術館。建物は「作品を新しい空間で見せ、アートを通じた交流の場を生み出す」という構想のもと、内外で評価の高い日本の建築家ユニット「SANAA」(妹島

箸折峠(近露の宝塔)

和歌山県田辺市中辺路町近露、熊野古道・中辺路(なかへち)、大坂本王子と近露王子の間にある峠が箸折峠。鎌倉時代建立と推定される高さ1.1mの宝篋印塔(和歌山県指定文化財「近露の宝塔」)が立っています。これは花山法皇の熊野御幸の際、経典をこの地

 

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