白味噌仕立ての汁に甘いあん入りの丸餅という風変わりの雑煮が、香川県の「あんもち雑煮」。香川県は出世魚のブリでも有名ですが、対岸の岡山県が「ブリ雑煮」なのに対して、「あんもち雑煮」。実は江戸時代には贅沢品だった砂糖の産地だったこともあり、ハレの日の食材として甘いあん入りの餅が選ばれたのです。
「あんもち雑煮」のこだわりは白味噌にも
温暖で少雨という瀬戸内海型の気候を生かし、江戸時代に讃岐国(さぬきのくに)では、竹糖(ちくとう)と称されるサトウキビの栽培が始まりました。
殖産振興で「讃岐三白」として特産品となったのが、綿、塩、そして和三盆(白砂糖)。
一般家庭では普段口にすることができなかった砂糖ですが、雑煮が庶民にも一般化した明治時代、ハレの日くらいは贅沢に砂糖を使った料理をということで、「あんころ餅」を雑煮に入れるという究極の選択が行なわれたのだと推測できます。
砂糖の製造は、保元元年(1156年)、保元の乱に敗れ讃岐国に流された崇徳上皇(すとくじょうこう)のもとに訪れる京の貴族たちが伝えたともいわれる歴史ある産業。
江戸時代からは、盆の上で砂糖を三度研ぐ(とぐ)という手間のかかる和三盆の製造が盛んになり、県内には文化元年(1804年)創業の三谷製糖などの老舗もあります。
「あんもち雑煮」のこだわりは白味噌にもあり、大豆の量を減らして米麹(こめこうじ)を増やし、塩分を控えて、12月頃正月用に仕込み、1ヶ月くらい熟成させた甘口の味噌を雑煮専用として使っています。
出汁(だし)は煮干しで取り、丸く輪切にした大根、金時人参を入れるのは家族円満の願掛け。
餅が椀にくっつかないように椀の底には大根を置くのがしきたりです。

| 【全国雑煮図鑑】 和三盆の産地ゆえ! 香川県「あんもち雑煮」 | |
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