全国の五重塔のなかで国宝に指定される塔は9塔、国の重要文化財に指定は13塔あります。さらに三重塔に国宝13塔、重要文化財43塔、多宝塔に国宝6塔、国の重要文化財35塔を数えます。そのなかで選ばれる「日本三名塔」は、法隆寺(奈良県斑鳩町)、醍醐寺(京都市)、そして瑠璃光寺(山口県山口市)の五重塔で、いずれも国宝。
「日本三名塔」を選んだ規準ははたしてあるのか!?
現存するダントツで日本最古の五重塔が、法隆寺西院伽藍の五重塔。
建築年は定かでありませんが、天智天皇9年(670年)の火災による焼失後に再建されたもの。
つまりは、飛鳥時代の建築。
仏教伝来からわずかに100年後くらいに建立されていることに。
法隆寺の五重塔は、原形であるインドのストゥーパー(本来は釈迦の遺骨を奉安するためのもの)が中国に伝わって楼閣スタイルとなり、日本に伝来という歴史を伝える日本の五重塔の原型のような塔ですから、「日本三名塔」の筆頭というのはうなづけます。
醍醐寺の五重塔はもともと平安時代築だと推測できますが、鎌倉時代に修築されています。
しかも紀州国湯浅(現・和歌山県湯浅町)にあったものを、豊臣秀吉が「醍醐の花見」を開いた醍醐寺に移築したもの。
移築後の落慶は、秀吉死後となっています。
秀吉が目をつけた名塔だから、「日本三名塔」入りもうなずける美しい塔です。
最後の瑠璃光寺の五重塔は室町時代の築。
山口市は「西の京」といわれ、大内文化が花開いた町です。
大内氏第9代当主・大内弘世(1325年〜1380年)が京にぞっこんで、都を模倣した町づくりをしたのが大内文化の始まり。
というわけで、大内文化を今に伝える貴重な五重塔ということもあってか、「日本三名塔」入りしています。
室生寺の五重塔(平安時代初期の築)、最北の羽黒山の五重塔(室町時代前期)は? という疑問も浮かびます。
実は「日本三名塔」は、選者不明。
つまり、誰が選んだのかわかっていないのです。
ですから、羽黒山五重塔(山形県)を入れるケースもありえるということになります。
国宝の天守は話題になるのですから、もう少し国宝五重塔にも注目があってもいいのかもしれません。
法隆寺・五重塔
所在地:奈良県生駒郡斑鳩町法隆寺山内1-1(西院伽藍)
創建年:天智天皇9年(670年)の火災以後
塔高:31.5m
国宝、「法隆寺地域の仏教建築物」として世界文化遺産に登録
醍醐寺・五重塔
所在地:京都府京都市伏見区醍醐東大路町22(下醍醐)
創建年:天暦5年(951年)
塔高:38m
国宝、境内全体が世界文化遺産「古都京都の文化財」に登録
瑠璃光寺・五重塔
所在地:山口県山口市香山町7-1(香山公園)
創建年:嘉吉2年(1442年)頃
塔高:31.2m
国宝
次点 羽黒山五重塔
所在地:山形県鶴岡市羽黒町手向手向7(出羽三山・羽黒山)
創建年:文中元年(1372年)
塔高:29.0m
国宝
日本三名塔とは!? | |
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