秋田県はスギの宝庫で天然木が茂る秋田スギの美林は、青森ヒバ、木曽ヒノキと並んで、日本三大美林にも数えられています。日本の固有種でもあるスギですが(ヒマラヤスギはマツの仲間)、実は太平洋側のオモテスギ、日本海側の裏スギに分かれ、当然、秋田スギは裏スギの仲間です。
最終氷期を生き残り、秋田に根付いた天然杉が秋田スギ
スギというと植林を思い浮かべますが、それは近代以降のことで、かつては佐渡島(大佐渡小杉立・舟山天然スギ林が現存)、伊豆半島、京都府(芦生京大芦生研究林が有名)、高知県(魚柳瀬スギ天然林が現存)などでもスギの天然林が繁茂していました。
日本海に浮かぶ隠岐の島はウラスギとオモテスギ、その混血が混在する特異な島となっています。
これは、今から2万年ほど前の最終氷期の頃、スギは温暖な伊豆半島、紀伊半島南端部、四国南端部、屋久島、温暖な対馬海流の影響を受けた若狭湾周辺から隠岐島にかけての地域に逃避していたと推測され、氷期を生き残ったスギの子孫が、各地の山に残されているという壮大な物語がスギの天然林には隠されています。
現在の天然のスギの北限は、青森県鯵ヶ沢町にある矢倉山国有林、南限は、「屋久杉」で名高い鹿児島県屋久島の屋久島国有林となっています。
秋田スギは、秋田県が日本海気候に支配されることから標高1000mほどまでの山地に生育し、秋田県北部の米代川流域の中~下流部、そして雄物川流域に天然スギの美林が現存しています。
青森ヒバと呼ばれるのは、アスナロの仲間であるヒノキアスナロのことで、秋田スギの天然林の中にもクロベ(ネズコ)、ブナ、ミズナラなどとともに混交しています。
人工林だと、整然と並ぶ姿にスギ林特有の美しさがありますが、日本三大美林は天然林ゆえに、混交林としての森の豊かさに価値があります。
天然の秋田スギは、年輪の幅が一定に揃い、木目が細かく、さらに強度に優れ、狂いが少ないことで、建築資材としても重宝されてきました。
秋田県特産の「曲げわっぱ」、樽などはこの秋田スギを使ったものでした(天然秋田スギの伐採、供給は、平成24年度で終了しています)。
江戸時代には秋田藩の財源となり、米代川、雄物川を筏を組んで下り、北前船を使って遠く京や大坂(現・大阪)へと運ばれました。
近代に入ってからは、大正2年敷設の仁鮒森林鉄道、明治41年敷設の仁別森林鉄道など、森林鉄道で搬出されていました。
仁別森林軌道の起点(現在のJR秋田駅東側)には、秋田貯木場が設けられ、鉄道で搬送していた時代が長く続いたのです。
国有林内では高度差を克服するため、峯越インクラインなど、インクラインと称するケーブルカーを設置(大正15年には9ヶ所のインクラインがありました)。
秋田営林局管内全体(当時は秋田県と山形県を管轄)で163路線、総延長1218.7kmにも及ぶ森林鉄道が走り、まさに秋田県は「林鉄王国」だったのです。
能代市二ツ井町にある仁鮒水沢スギ植物群落保護林は、18.46haという広大な面積を誇る秋田スギの美林で、学術的にも貴重な場所で、日本三大美林を訪ねる場所としても絶好です。
なかでも「きみまち杉」は、樹高58mで、平成8年、「樹高日本一」宣言を行なっています。
オモテスギとウラスギは、DNA塩基配列の最新の解析からも遺伝的な違いが判明していますが、よく見ると葉にも大きな違いがあります。
ウラスギはオモテスギよりもトゲトゲした葉の一つ一つが短くなっており、雪が積もりにくいので山間の地でも優越的に生き残ることができたのだと推測できます。
秋田スギとは!? 実は太平洋側のオモテスギとは大きな違いがある! | |
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