関東でもっとも東京に近い立地で天然氷が造られるのが、秩父・長瀞。埼玉県秩父郡皆野町にある「阿佐美冷蔵」では天然氷の氷室を所有し、自家製造の天然氷を使ったかき氷を通年味わうことができます。2025年は氷を切り出す作業が1月12日(日)にスタートしています。
氷池の水が15cmほど凍ったら切り出して氷室に保存
宝登山の山麓、山から湧き出す清冽な水を使って冬の寒冷な気候を利用しての天然氷造りは、明治時代に始まっています(かつては秩父地方だけで17ヶ所も天然氷の製造池がありました)。
明治時代に天然氷造りが盛んになったのは、蚕種(蚕の卵)を冷やすことに利用され、大量の氷が消費されたからです(そのため、養蚕の盛んな長野県、埼玉県秩父地方などで天然氷が製造されました)。
今では天然氷というとかき氷を連想しますが、冷蔵庫が普及する以前は、冷蔵用に重宝されたのです(大正時代からは機械製氷と併用されましたが、徐々に機械製氷が主体に)。
「阿佐美冷蔵」は明治23年創業という老舗で、山の水を人工の池に引き込み、厳寒の気候を利用して凍らせ、十分に厚くなったところで切り出し、自前の氷室(ひむろ=貯蔵庫)で保管しています。
採氷用の池は、10m×15mほどの広さが段々畑のように3段あり(昭和6年に築いた製氷用の池)、このうちの2段(2面)を使って氷を造っています。
雪が降ると造り直しになることもあるとかで、雪の降らない低温の冬が好条件ということに。
落ち葉なども入り込むこともあるので、日々の管理も欠かせません。
切り出しは、厚さ14cmまで凍らせた氷を、電動丸のこを使って縦70cm、横50cmの大きさに切り出し、氷ばさみで引き上げてトラックに積み込んで氷室へと搬入。
おもに夏場にかき氷で消費されています。
1回の採氷で40tほどの天然氷ができるとのことで、2月上旬まで天然氷造りは続けられます。
ちなみに天然氷は、不純物が少なく、水分子同士がしっかり結合しているため、雑味がなくまろやかな味わいになるのだとか。
天然氷の蔵元は栃木県日光市に3ヶ所、長野県軽井沢町に1ヶ所、山梨県に2ヶ所、そして秩父の「阿佐美冷蔵」と7ヶ所しかありません。
阿左美冷蔵は、上長瀞駅に近い「金崎本店」(皆野町金崎)のほか、長瀞駅から宝登山ロープウェイの山麓駅に向かう途中に「寶登山道店」(秩父郡長瀞町長瀞)があり、通年、天然氷のかき氷を味わうことができます。
秩父・長瀞で天然氷の切り出しが始まる! | |
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