鹿児島県十島村、トカラ列島の悪石島(あくせきじま)で、旧暦7月16日の盆最終日夕刻に現れ、島人の邪気(じゃき)と穢(けがれ)を祓う神が、ボゼ。赤土と墨を塗りつけた仮面を被り、身体にはビロウの葉を巻つけ、さらに手足にはシュロ皮やツグの葉を当てがうという異様な出で立ちです。
悪石島に伝わる摩訶不思議な盆の来訪神
旧暦7月16日の盆最終日夕刻に呼び太鼓の音に導かれ、盆踊りで賑わう悪石島小中学校の校庭に3人の若者が扮するボゼが登場。
男根を模したという長い杖「ボゼマラ」を手にして、迫力満点。
島では、おそれ多くも、怖いものとされ、「ボゼマラ」を手にするボゼは、ボゼマラの先端に付けた赤い泥を擦りつけようと観衆を追い回すので、一帯は騒然となるのです。
赤い泥を付けられると、悪魔祓いの利益があるとされ、女性は子宝に恵まれると言い伝えられています。
やがて太鼓のリズムがゆったりとなると、ボゼは身体を揺すって踊り始め、再び暴れだしたかと思えば、その場を去っていくのです。
悪石島の盆踊り保存会が伝承する「悪石島のボゼ」は国の重要無形民俗文化財に指定。
さらに「来訪神仮面・仮装の神々」の一つとしてユネスコ無形文化遺産にも選定されています。
鹿児島県内で、ユネスコの無形文化遺産に゙選定される「来訪神仮面・仮装の神々」は、甑島(こしきじま)のトシドン(薩摩川内市)、薩摩硫黄島のメンドン(鹿児島郡三島村)と悪石島のボゼの3件。
本土の仮面神が大晦日、小正月が中心なのに対して(甑島のトシドンも大晦日)、南西諸島では、ボゼが盆(旧暦7月15日)、メンドンが八朔(旧暦8月1日)というのも大きな違いとなっています。
悪石島へのアクセスは「フェリーとしま2」のみで、島にはレンタカー、レンタサイクル、タクシーなどの公共交通、さらには食堂やスーパー、コンビニエンスストアなどはありません。
食料を購入できるのは小さな悪石島売店が1軒のみ。
画像協力/鹿児島県
トカラ列島・悪石島の摩訶不思議な神「ボゼ」とは!? | |
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