山梨県側の富士登山といえば、富士スバルラインで5合目(標高2300m)まで登りますが、昭和39年4月1日に富士スバルラインが開通するまでは、少なくとも1合目の馬返しから、自力登山が必要でした。その吉田口は、現在では山麓の浅間神社から山頂まで、往時と同じように登拝できる唯一のルートとなっています。
江戸時代の登拝道が現役、世界遺産の構成資産にも

世界文化遺産に登録される富士山ですが、実は富士山の登拝道(山麓の浅間神社に参拝し、山頂を目指す登山道)で、唯一、今も歩くことができるのが吉田口登山道です。
山梨県側の富士登山道は、昭和29年に吉田口の登山者数と、船津口(現・河口湖口)の登山者数が逆転。
船津口登山道は昭和26年に3合目まで登山バスが運転されるようになり、実質的に登山の時間が短縮する河口湖駅を起点とする船津口に移り、富士スバルラインの開通で決定的になったのです。
こうして、北口本宮冨士浅間神社裏から馬返までの富士山自動車のバス路線も利用者が減少して廃止。
山小屋、茶屋も廃業する施設が増え、吉田口登山道も荒廃しますが、昭和48年以降には富士講の道、文化遺産の登山道として保存整備を望む声も高まります。
こうした吉田口登山道の調査、保護の動きは、結果として文化遺産としての世界遺産登録にもつながったのです。
吉田口1合目の馬返しは、文字通り、戦前はここで馬を返したという場所。
標高1450mで、まさに登山口でした。
少し歩いた鈴原天照大神神社が正式な1合目。
2合目が富士御室浅間神社、3合目が三軒茶屋と呼ばれる場所で、荒廃した建物が残されています。上吉田の御師の家を朝出発すると、ちょうど昼となるので、中食堂(ちゅうじきどう)とも称されています。
荒廃した山小屋には「文部省報告登山相談所」の看板も。
富士山というと5合目以上の登山のイメージがありますが、荒涼とした火山礫を登るので、登山自体の面白さとしては5合目以下に集約されています。
馬返しから5合目の佐藤小屋へは2時間30分ほどの頑張りで到達でき、さらに50分ほどで富士スバルライン5合目に到達、夏も涼しい森林帯なので、トレッキングコースとしてもおすすめできます。
ちなみに、北口本宮冨士浅間神社を起点とする吉田口登山道は、北口本宮冨士浅間神社とともに、全ルートが世界文化遺産「富士山-信仰の対象と芸術の源泉」の構成資産となっています。

富士山の登拝道で唯一、浅間神社〜山頂を踏破できるのは「吉田口登山道」 | |
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