気象庁の日本の活火山の噴火資料をもとに、明治以降の全国111活火山の火山活動のデータを調査。人的被害(死亡事故)の生じた事故を中心に、上高地の絶景・大正池を生み出した焼岳噴火、全島民の島外避難となった伊豆大島・三原山大噴火などを加えた51件を、年代順に紹介します。
戦後最大の火山災害は、御嶽山の水蒸気爆発
明治以降の火山被害で、最大のものは明治21年の磐梯山噴火(福島県)。
死者は461名(477名とも)を数えています。
2番目が明治33年、同じ福島県の安達太良山(あだたらさん)の噴火で、当時、硫黄がマッチの原料などとなるため、火口に硫黄採掘所があったので、噴火で72名の犠牲者が生まれています。
3番目は平成26年の御嶽山山頂での水蒸気爆発で、登山者63名が犠牲になっています。
長野・群馬県境にそびえる浅間山も、以前は自由に山頂火口まで立ち入ることができたため、小規模な噴火でも噴石の犠牲になる登山者などがいましたが、気象庁は、昭和40年から火山情報の正式な提供を開始、さらに平成19年12月1日から噴火警報・予報、噴火警戒レベルの運用を開始し、火山活動の活発化に伴って入山規制などが行なわれるようになったため、噴石による死亡事故などは大幅に減少しています。
記憶に新しい平成26年の御嶽山の噴火は、予測の難しい水蒸気爆発によるもの。
水蒸気爆発は、地下奥深くで地下水がマグマに接触した際、水が水蒸気となって急激に膨張し、地上に爆発的に噴出するもののため、予兆が乏しく予測が難しいとされてきました。
それでも平成27年に箱根火山(大涌谷)での小規模な水蒸気爆発は、事前のデータなども蓄積され、地震研究が前進しています。
観測装置の設置と精度の向上、GPSによる地殻変動の検知などで、以前よりも火山研究は進展していますが、まだまだ未知の世界も多く、地震とともに「備えあれば患いなし」であることに変わりありません。
51件のリストを見てもらえば、全国の火山で、数多くの事故が起きていることがよくわかります。
明治以降のおもな火山被害 51選
年代 | 火山名 (都県名) | 噴火内容 | 噴火の場所 被害状況など |
明治5年 12月30日 | 阿蘇山 (熊本県) | 噴火 | 硫黄採掘者が数名死亡 |
明治7年 7月3日 | 三宅島 (静岡県) 現・東京都 | マグマ噴火 (中規模) | 北山腹、神着村南方の山中で噴火 人家45軒が溶岩に埋没 死者1名 |
明治21年 7月15日 | 磐梯山 (福島県) | 水蒸気噴火 (中規模) | 大磐梯山頂北方で噴火し、山体崩壊 岩屑なだれ(土石流)により村落埋没 (山麓の5村11集落埋没) 桧原湖などの湖沼群が誕生 461名(477名とも) |
明治28年 10月16日 | 霧島山 (宮崎・鹿児島) | 噴火 | 御鉢で噴火 噴石で死者4名 |
明治29年 3月15日 | 霧島山 (宮崎・鹿児島) | 噴火 | 御鉢で噴火 登山中の仏国海軍大主計が負傷 死者1名(案内人) |
明治33年 2月16日 | 霧島山 (宮崎・鹿児島) | 噴火 | 御鉢で噴火 死者2名、負傷者3名(いずれも狩猟者) |
明治33年 7月17日 | 安達太良山 (福島県) | 水蒸気噴火 (中規模) | 沼ノ平火口から噴火 火口の硫黄採掘所全壊 死者72名、負傷者10名 |
明治35年 8月7日~9日 | 鳥島 (東京都) | 水蒸気噴火 | 子持山西麓、兵庫湾の海底で噴火 島の中央に大火口生成 全島民125名死亡 |
明治41年 ~大正3年 | 浅間山 (長野・群馬) | マグマ噴火 (小規模) | 釜山火口で噴火 死者多数 |
大正3年 1月12日 | 桜島 (鹿児島県) | マグマ噴火 (大規模) | 南岳西および東山腹で噴火 噴火による埋没・全焼家屋約2140戸 溶岩の流出で桜島が大隅半島と陸続きに 死者58名、負傷者112名 |
大正4年 6月6日 | 焼岳 (長野・岐阜) | 水蒸気噴火 (中規模) | 噴火場所は大正池火口 泥流が梓川のせき止め、大正池誕生 |
大正11年 12月8日 | 雲仙岳 (長崎県) | 火山性地震 | 島原地震 地割れ、噴砂、山崩れ発生 死者27名、家屋倒壊600棟余 |
大正15年 5月24日 | 十勝岳 (北海道) | 水蒸気噴火 マグマ噴火 (中規模) | 中央火口丘から噴火 融雪型火山泥流発生 死者・行方不明144名 |
昭和4年 6月17日 | 北海道駒ヶ岳 (北海道) | マグマ噴火 (大規模) | 昭和4年火口を生成 家屋の焼失、全半壊、埋没など1915余 死者2名、負傷者4名 |
昭和4年 8月20日 | 浅間山 (長野・群馬) | マグマ噴火 (小規模) | 釜山火口で噴火 火口付近で死者6名 |
昭和7年 10月 | 草津白根山 (群馬県) | 水蒸気噴火 (小規模) | 湯釜、涸釜などで噴火 火口付近で死者2名、負傷者7名 |
昭和7年 12月18日 | 阿蘇山 (熊本県) | 噴火 | 第1火口で噴火 噴石活動により火口付近で負傷者13名 |
昭和8年 5月10日 | 箱根火山 (神奈川県) | 噴気 | 大涌谷の噴気孔で大音響とともに噴出 死者1名 |
昭和8年~9年 | 口永良部島 | 噴火 | 噴火場所は新岳火口 七釜集落全焼、死者8名、負傷者26名 家屋全焼15棟 |
昭和13年 | 磐梯山 (福島県) | 山崩れ | 死者2名、負傷者5名、 流失及び半壊家屋4棟 |
昭和14年 8月18日 | 鳥島 (東京都) | マグマ噴火 (中規模) | 硫黄山で噴火、溶岩流出 住民、海軍気象観測所、全員撤退 |
昭和15年 7月12日 | 三宅島 (東京都) | マグマ噴火 (中規模) | 北東山腹噴火割れ目、山頂火口で噴火 溶岩が赤場暁に到達 死者11名、負傷者20名 |
昭和16年 4月1日 | 浅間山 (長野・群馬) | マグマ噴火 (小規模) | 釜山火口で噴火 死者1名、負傷者2名 |
昭和18年~20年 | 有珠山 (北海道) | マグマ噴火 | 畑地から水蒸気噴火が開始 昭和新山が誕生 幼児1名死亡、家屋焼失 |
昭和21年 3月9日 | 桜島 (鹿児島県) | マグマ噴火 (中規模) | 昭和火口で噴火 溶岩流は黒神海岸まで到達 死者1名 |
昭和22年 8月14日 | 浅間山 (長野・群馬) | マグマ噴火 (小規模) | 釜山火口で噴火 噴煙高度1万2000m 登山者9名死亡 |
昭和25年 9月23日 | 浅間山 (長野・群馬) | マグマ噴火 (小規模) | 釜山火口で噴火 火口縁北側に巨大岩塊噴出 登山者1名死亡、6名負傷 |
明治26年 6月7日 | 吾妻山 (福島県) | 水蒸気噴火 (小規模) | 一切経燕沢火口群で噴火 火口付近調査中の2名死亡 |
昭和27年 9月24日 | ベヨネース列岩 (東京都) | マグマ噴火 | 明神礁で噴火、大爆発を伴う新島出現 マグマ水蒸気噴火も 調査中の第5海洋丸遭難、31名殉職 |
昭和28年 4月27日 | 阿蘇山 (熊本県) | 噴火 | 第1火口で噴火 人身大~人頭大の噴石が飛散 観光客死者6名、負傷者90余名 |
昭和28年 7月26日 | 箱根火山 (神奈川) | 山体崩壊 | 早雲 地獄で山崩れ 死者10名、負傷者16名 火山活動との関係は不明 |
昭和32年 10月13日 | 大島・三原山 (東京都) | マグマ噴火 (小規模) | 新火口生成 火口付近の観光客死者1名 重軽傷者53名 |
昭和33年 6月24日 | 阿蘇山 (熊本県) | 噴火 | 第1火口が突然噴火 阿蘇山測候所にまで噴石到達 死者12名、負傷者28名 |
昭和36年 8月18日 | 浅間山 (長野・群馬) | マグマ噴火 (小規模) | 釜山火口で噴火 行方不明1名 |
昭和37年 6月29日 | 十勝岳 (北海道) | 水蒸気噴火 マグマ噴火 (中規模) | 中央火口丘南側湯沼付近から噴火 噴石が火口縁の硫黄鉱山事務所を破壊 死者5名、負傷者11名 |
昭和37年 8月24日 | 三宅島 (東京都) | マグマ噴火 (中規模) | 北東山腹噴火割れ目で噴火 噴石丘・三七山生成 地震が頻発し学童は島外へ疎開 |
昭和42年 11月4日 | 立山火山 (富山県) | 噴気 | 気象庁の名称は弥陀ヶ原火山 地獄谷の火山ガス(硫化水素)で キャンプ中の登山者2名死亡 |
昭和43年 2月21日 | 霧島山 (宮崎・鹿児島) | 地震 | 震源は韓国岳の北西15km付近 死者3名、負傷者42名、住家全壊368棟 |
昭和49年 7月28日 | 妙高焼山 (新潟県) | 水蒸気噴火 | 山頂近くに小火口群が形成 半径800mの範囲に大きな噴石が落下 キャンプの登山者3名死亡 |
昭和51年 3月2日 | 草津白根山 (群馬県) | 水蒸気噴火 (小規模) | 水釜北東部で噴火 本白根山白根沢で登山者3名死亡 (滞留火山ガスによる) |
昭和52年~53年 | 有珠山 (北海道) | マグマ噴火 (中規模) | 小有珠溶岩ドーム東麓に火口列誕生 マグマ水蒸気噴火も多発 泥流が発生し、死者2名、行方不明1名 住家被害196棟、非住家被害9棟 |
昭和54年 9月6日 | 阿蘇山 (熊本県) | 噴火 | 赤熱噴石活動 火口北東の楢尾岳で死者3名、重傷2名 |
昭和58年 10月3日~4日 | 三宅島 (東京都) | マグマ噴火 (中規模) | 南南西山麓噴火割れ目で噴火 溶岩流が海中に到達、 マグマ水蒸気爆発が発生 住宅の埋没・焼失約400棟 |
昭和59年 9月14日 | 御嶽山 (長野・岐阜) | 火山性地震 (山体崩壊) | 御嶽山南南東斜面で山体崩壊 死者29名、住宅全半壊87棟 |
昭和61年 | 大島・三原山 (東京都) | マグマ噴火 (中規模) | 南側火口壁などで噴火 外輪山外側でも割れ目噴火 全島民1万人島外へ避難(約1ヶ月) |
平成3年 6月3日 | 雲仙岳 (長崎県) | マグマ噴火 | 地獄跡火口と屏風岩火口で噴火 溶岩ドームが成長し火砕流発生 死者・行方不明43名 平成を通じて火山活動が活発 |
平成7年 2月11日 | 焼岳 (長野・岐阜) | 水蒸気爆発 | 安房トンネル工事中に作業現場で発生 作業員4名が犠牲に |
平成9年 9月 | 安達太良山 (福島県) | 火山ガス | 沼ノ平火口内で死亡事故 火山ガスで死者4名 |
平成12年~14年 | 三宅島 (東京都) | マグマ噴火 (中規模) | 山頂カルデラで噴火 三宅島の西方海域で海底噴火 2500年ぶりとなるカルデラを形成 |
平成26年 9月27日 | 御嶽山 (長野・岐阜) | 水蒸気噴火 | 剣ヶ峰山頂南西側の火口列で噴火 大きな噴石が1km程度の範囲に飛散 死者・行方不明63名 |
平成30年 1月23日 | 草津白根山 (群馬県) | 水蒸気噴火 (小噴火) | 鏡池北火口北側の火口列など 噴石で死者1名、負傷者11名 |
明治以降の噴火の歴史を学ぶ おもな火山被害 51選 | |
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