伊賀流忍者のふるさと、三重県伊賀地方を代表する銘菓が、「かた焼き」。小麦粉、砂糖、胡麻などを原料にその名の通り硬く焼き上げたせんべい。忍菓と呼ばれるのは、軽くて日持ちすることから伊賀忍者の携帯食だったから。合戦などの際にも優秀な保存食として機能したのだとか。
あまりの硬いので、木槌がセットで販売される!
小麦粉と砂糖、水を混ぜてよく練った生地をひと晩寝かし、生地を直径3cmほどの棒状に加工。
さらに2.5cmほどの厚さに切って、黒胡麻を付け、専用の金具を用いて、生地を上から押し、丸くなるように伸ばしながらじっくりと両面を焼き上げます。
単純な工程ですが、気温や湿度、生地の状態に合わせて職人は、焼き加減を調整しています。
伊賀市の小澤製菓(かた焼きは「IGAMONO」認定品)では熟練の職人が1枚40分かけて焼き上げるということで、手間のかかるせんべいだということがよくわかります。
冷めるほどに硬さが増していき、保存料などの添加物なしでも日持ちするのも特長のひとつ。
日本一硬いともいわれ、かたやきを割るための木槌をセットにして販売する店も(小澤製菓でも木槌が付属)。
忍者の携行食というのはあくまでも伝承ですが、そのままかじって食べたのではなく、口に含んで柔らかくして時間をかけて味わったのだと推測されています。
硬くて厚みもあるため、かつては石や刀の鞘(さや)、鍔(つば)で割って食べていたといい、伊賀忍者が屋根裏や床下に身を潜める際の行動食になっていたとされています。
現在では、そのままでは食べづらいという人も多いため、生地に長芋を入れて食べやすくしたり、餡を入れた半生菓子、さらには洋菓子風にアレンジしたのも登場しています。
あまりに硬いため、お茶、ホットミルクなどに浸して柔らかくして食べる方法もありますが、砂糖が入っているので、南部せんべいを使ったせんべい汁(旧南部藩の領地だった青森県南東部から岩手県北部にかけての伝統食品)のように鍋料理には使えません。
南部せんべいは小麦粉に塩と水を混ぜているので、砂糖を混ぜる「かた焼き」とは異なっています。
歴史的には現在のかたちになってから、すでに200年は経ているというので、忍者の携行食という話しもあながち大げさではなさそうです。
延宝4年(1676年)に伊賀で記された忍術伝書『万川集海』(まんせんしゅうかい)には、兵糧丸(ひょうろうがん)が記されていますが、うるち米などのでんぷん質のものに、松の実やごま、蜂蜜または水飴を加え、さらに肉桂(シナモン)や薄荷、生姜で風味付をし、丸薬のように丸めて携行したことがわかっています。
それに比べるとかた焼きはいたってシンプルですが、蜂蜜などで味付けすれば、軽量で、カロリー補給にはもってこいだったのかもしれません。
伊賀忍者の携帯食、忍菓「かた焼き」とは!? | |
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