岩手県岩手郡雫石町(しずくいしちょう)、小岩井農場内にあるこんもりと緑の茂る標高379mの丘が、狼森(おいのもり)。周辺の笊森(ざるもり)、盗森(ぬすともり)、黒坂森とともに宮沢賢治ゆかりの森で、国の名勝「イーハドーブの風景地」のひとつにもなっています。
宮沢賢治の童話『狼森と笊森、盗森』に登場
宮沢賢治の童話の中に出てくる題名・登場人物は造語がほとんどですが、宮沢賢治の童話『狼森と笊森、盗森』に狼森、笊森、盗森はタイトルになっているように実名で登場。
宮沢賢治にとって印象深かったのだと推測できます。
生徒を連れて秩父まで地質調査に出かけるほど地質学にも精通する宮沢賢治ですが、その創作活動の重要な母胎となったのが、鋭い観察眼を通じて科学的に把握された自然。
小岩井農場周辺に点在する森は、人間と自然との関係を表す象徴的な存在として描かれているのです。
小岩井農場も明治24年創業。
小岩井農場内の牛舎、サイロなど歴史的建造物21棟は国の重要文化財に指定されています。
宮沢賢治は明治43年、中学2年の秋、岩手山の登⼭遠⾜の帰路に小岩井農場に立ち寄ったのが最初。
当時最先端のヨーロッパ⾵の牧畜、牧歌的な景観は賢治を大いに刺激したのでしょう、幾度となく農場を訪れ、⼩岩井農場を舞台とした作品『⼩岩井農場』(⼼象スケッチ『春と修羅』所収)、『狼森と笊森、盗森』を著しています。
狼森は小岩井農場敷地内にあるので、普段は立ち入ることができません。
毎年秋に小岩井農場が開催する『狼森賢治ウォーク』に参加することが、唯一の探勝するチャンスとなっています(予約が必要です)。
NHKの連続テレビ小説『どんど晴れ』(平成19年放送)に登場して有名になった小岩井農場一本桜ですが、実は撮影ポイントから一本桜の右側に映り込む森が、狼森なので、小岩井農場を訪れたらぜひ確認を。
宮沢賢治『狼森と笊森、盗森』
小岩井農場の北に、黒い松の森が四つあります。いちばん南が狼森(おいのもり)で、その次が笊森(ざるもり)、次は黒坂森、北のはづれは盗森(ぬすともり)です。
この森がいつごろどうしてできたのか、どうしてこんな奇体な名前がついたのか、それをいちばんはじめから、すつかり知つてゐるものは、おれ一人だと黒坂森のまんなかの巨(おほ)きな巌(いは)が、ある日、威張つてこのおはなしをわたくしに聞かせました。
ずうつと昔、岩手山が、何べんも噴火しました。その灰でそこらはすつかり埋(うづ)まりました。このまつ黒な巨きな巌も、やつぱり山からはね飛ばされて、今のところに落ちて来たのださうです。
(文頭を抜粋)
狼森 | |
名称 | 狼森/おいのもり |
所在地 | 岩手県岩手郡雫石町丸谷地 |
関連HP | 雫石町公式ホームページ |
電車・バスで | JR盛岡駅から小岩井農場まきば園行き、網張温泉行きバスで30分 |
ドライブで | 東北自動車道盛岡ICから約14km |
問い合わせ | 小岩井農場まきば園 TEL:019-692-4321/FAX:019-692-0303 |
掲載の内容は取材時のものです。最新の情報をご確認の上、おでかけ下さい。 |
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