堆砂率94.6%、北アルプス・黒部川のダムが土砂に埋もれている!

国土交通省の全国のダムの堆砂状況(令和5年度)によれば、日本でもっとも土砂に埋もれた、堆砂率97.8%のダムは、南アルプス山中の大井川水系寸又川を堰き止めた千頭ダム(せんずだむ/静岡県榛原郡川根本町)。2番目に埋まったダムは、北アルプスの深部、黒部川の小屋平ダム(富山県黒部市)で、堆砂率94.6%となっています。

黒部峡谷トロッコ電車の車窓からも見学可能

小屋平ダムは、黒部川本流を堰き止めたダムで、有名な黒部ダムの下流に位置しています。
木屋平ダムの横を走る黒部峡谷鉄道は、もともと電源開発を目的にしたダム建設のために敷設されたトロッコ軌道(軽便鉄道)。

小屋平駅(こやだいらえき)まで鉄道が延伸したのも小屋平ダムと黒部川第二発電所の建設が目的で、駅も昭和4年に開設しています。
世界恐慌の荒波を受けながらも、昭和11年に木屋平ダムが完成。
その後も黒部川上流に線路を伸ばし(トンネルから熱湯が吹き出した高熱隧道などの難関も)、仙人谷ダムも完成、戦後には黒部ダムも誕生しています。

富山平野と関西の電力需要をまかなうことが目的でもあったため、現在は日本電力を引き継いだ関西電力の管理するダムですが、総貯水容量212.2万立法メートルに対して、堆砂量199.9万立法メートルと、堆砂率94.6%。
ほぼ埋まった状態であることがわかります。

上流の仙人谷ダムも総貯水容量68.2万立法メートルに対して、堆砂量63.3万立法メートルで92.9%の堆砂率となっていて、北アルプスの雪解け水などが運ぶ土砂の量が多いことがよくわかります。

少し気になる黒部ダムは、容積が巨大で、総貯水容量1億9928.5万立法メートルもあり、堆砂量は2669.8万立法メートルで堆砂率0.13%と、堆砂量は多いものの堆砂率では格段の違いをみせています。

黒部川本流には上流から黒部ダム、仙人谷ダム、小屋平ダム、出し平ダムの4つの発電用利水ダムが築かれていますが、全国でも有数の流出土砂の多い河川ということから最下流部に位置する関西電力の出し平ダム、国土交通省の宇奈月ダムでは、ダムに堆積する土砂を下流に排出できるよう、それぞれに排砂設備が設けられています。

小屋平ダムもよく見ると右岸に排砂路と流木路を設けていますが、すでにほぼ埋まった状態になっています。
黒部峡谷鉄道のトロッコ列車で、何気なく通り過ぎてしまいますが、ダム近くでは湖底が見えるほどの浅瀬が連続していることにも注目を。

ちなみに、小屋平駅は、関西電力関係者のみが乗降できる駅で、観光客は下車できません(旅客列車の行き違いなどが行なわれています)。

堆砂率94.6%、北アルプス・黒部川のダムが土砂に埋もれている!
名称 小屋平ダム/こやだいらだむ
所在地 富山県黒部市宇奈月町
掲載の内容は取材時のものです。最新の情報をご確認の上、おでかけ下さい。
千頭ダム

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