日本全国を旅すると、湖よりも巨大な池、散歩気分で一周できる小さな湖などがあり、湖と池は何が違うのか、疑問に思うことがあります。ダム建設で誕生する貯水池は、「ダム湖」と呼ばれ、湖名が付けられる場合がほとんどです。池と沼の違いなど、湖沼学の定義などを紹介しましょう。
湖沼学の分類も意外にファジー
まずは地形図などを制作する国土地理院の見解から。
「湖沼等の用語については,厳密に区分することは困難です」としながらも、湖沼学の礎を築いたスイスの湖沼学者フランソワ=アルフォンス・フォーレル(François-Alphonse Forel、1841年〜1912年)の定義を紹介しています。
フォーレルの分類
- 湖:水深があり、植物は湖岸に限られ、中央に深い所には沈水植物を見ないもの
- 沼:湖より浅く、最深部まで沈水植物が繁茂するもの
- 池:通常、湖や沼の小さなものをいい、とくに人工的に作ったもの
その代表例として、湖=琵琶湖、摩周湖、田沢湖、沼=印旛沼、伊豆沼、池=満濃池を挙げています。
人工的に造ったものが池ならば、ダム湖は、本来は貯水池なのでダム池になるはずですが、国土地理院は「○○湖と名前がつけられており、地図では、フォーレルの区分と関係なく、その土地で実際に呼ばれている名称が記載されています」と解説しています。
深さでいえば印旛沼は、北印旛沼が水深4.8m、西印旛沼が2.9m、伊豆沼が1.2mと浅いことがよくわかります。
ただし、例外も多く、釧路湿原の達古武湖は水深1.8mなので、本来は達古武沼(実際に地元でも沼と呼ばれるケースもあります)が正しいことに。
原生花園で知られる北海道のオホーツク海沿いの湖沼群も、濤沸湖(とうふつこ)が水深2.4m、隣接の藻琴湖(もことこ)が5.4mなので、藻琴湖はなんとか湖ですが、濤沸湖は限りなく沼に近い感じです。
白鳥で有名なウトナイ湖も水深がわずかに1.0mなので、本来ならウトナイ沼でしょうし、青森県にある十三湖も水深1.5mなので十三沼ということに。
十三湖は汽水湖で、地元でも十三潟とも称されているので、イメージ的にもこの十三潟が正解かもしれません。
石川県の海跡湖も沼ではなく潟が付けられ、河北潟(水深4.8m)、柴山潟(水深4.5m)などと呼ばれています。
福井県の三方五湖の三方湖も水深3.4mなので、限りなく三方沼に近いということに。
有名な島根県の宍道湖(しんじこ)は水深5.8m、5m以上あるので、なんとか湖でしょうか。
日本の湖沼学者・吉村信吉(よしむらしんきち)の著わした『湖沼学』(昭和12年、三省堂)によれば、「周囲を陸地に囲まれた窪地にあり、海と直接連絡していない静止した水体」を湖・池・沼と定義し、分類しています。
吉村信吉の分類
- 湖:通常最大水深5m以上
- 沼:最大水深5m未満
- 池:小規模で人工的に作られたもの
吉村信吉は国内の多くの湖沼を研究していますが、実際に日本国内の湖と沼の違いもおよそ水深5mで区切られている感じです(ただし例外は多数あります)。
群馬県の菅沼は平均水深38m、最大水深75mで、定義に合わせると菅湖のはずですが、地質学的には堰止湖なので、菅沼と称されています。
将来的に埋まって浅くなるということを想定しているのか、東日本では堰止湖を沼と呼ぶケースがあり、例外が生まれています。
池と湖の区分も実は曖昧で、鳥取県の湖山池(こやまいけ)は、本来は周囲18kmと巨大な汽水湖なので、湖山湖のはずですが、「日本一大きな池」として君臨しています。
結論からいえば湖沼学に基づいて区分されてはいるものの、近代以前からの地元での呼び名もあり一定ではなく、とくに人工池は観光目的もあってかなり湖名が付けられていることがわかります。
○○池よりも〇〇湖の方が、イメージが良く(小河内ダムのダム湖は正式名小河内貯水池、一般的には奥多摩湖)、湖が使われるのがセオリーとなっています。
湖と池、沼の違いは!? | |
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