足尾銅山の公害被害を今に伝える中倉山山頂「孤高のブナ」とは!?

孤高のブナ

栃木県日光市足尾町、旧足尾銅山の北西にそびえる中倉山(1539m)の山頂近くの稜線にポツンと立つブナの木が、「孤高のブナ」。かつて足尾銅山周辺の標高1000m〜1500mにはブナの森が茂っていましたが、足尾銅山の煙害で、中尾山では「孤高のブナ」を除いて死滅。1本のブナの木が「歴史の生き証人」となっているのです。

中倉山の山頂から少し下った稜線に

孤高のブナ

足尾銅山の公害といえば、銅の採掘や製錬によって排出された有毒物質が渡良瀬川に流れ込み、鮎の大量死をきっかけに下流域に多大な環境被害をもたらした足尾鉱毒事件が有名。

1890年、渡良瀬川の洪水で、鉱毒を含んだ水が田んぼに流れ込み、稲が立ち枯れるなどの被害が生まれました。
この年行なわれた第1回衆議院議員総選挙で栃木3区から出馬し、初当選を果たしたのが、地元の名士・田中正造(たなかしょうぞう)。
1891年、田中正造は、鉱毒の害を視察し、帝国議会で質問し、1901年には明治天皇に直訴するなど、先頭に立って行動しました。

足尾銅山の環境破壊は、この鉱毒事件が有名ですが、実は銅山周辺はハゲ山。
坑道内の落盤防止のため、支える柱材に伐採され、さらに鉱毒ガスや酸性雨で周囲の森が枯れ果てていったのです。
銅精錬の過程で出る亜硫酸ガスは、1日あたり100トンにも及んだとか。

治山活動も1897年からスタートし、今も精力的に続けられていますが、中倉山登山道入り口で茂る緑は、ヤシャブシとリョウブで、従来の樹種ではなく、酸性土でも生え、大気中の窒素を取り込み、栄養にする力を有する木ということで植栽されたもの。

孤高のブナへは、銅親水公園(駐車場)が入山口。
銅親水公園から45分ほど林道を歩くと中倉山登山口で、ここからつづら折れの登山道を1時間40分ほど歩くと、中倉山山頂(標高1520m地点)。
途中からは男体山を眺める登山コースです。
さらに標高1539mの最高点を目指し鞍部(コル)まで10分ほど下ると、稜線に「孤高のブナ」がそびえ立っています。

樹齢は120年以上といわれ、足尾銅山の銅の精錬所からの距離は5kmほど。
この木のあったほぼ全村が山林という渡良瀬川の源流部の松木村(まつぎむら)が煙害で廃村となったのが1902年のことなので、まさに歴史の生き証人ということになります。

ちなみに、足尾銅山の歴史を伝える松木渓谷は、その荒涼とした風貌から「日本のグランド・キャニオン」とも称されています。

足尾銅山の公害被害を今に伝える中倉山山頂「孤高のブナ」とは!?
所在地 栃木県日光市足尾町
場所 孤高のブナ
ドライブで 北関東自動車道伊勢崎ICから約53kmで銅親水公園駐車場
駐車場 銅親水公園駐車場(30台/無料)
掲載の内容は取材時のものです。最新の情報をご確認の上、おでかけ下さい。
銅親水公園

銅親水公園(足尾砂防堰堤)

栃木県日光市足尾町、かつての足尾銅山の本山坑エリアにあるのが銅親水公園(あかがねしんすいこうえん)。足尾銅山の足尾砂防堰堤(昭和29年完成、通称・足尾ダム)の下に、足尾銅山の煙害で、荒廃した松木渓谷の山々に緑と潤いを取り戻そうと国・県・町の

松木渓谷

松木渓谷

栃木県日光市足尾町にある渓谷が松木渓谷。明治35年に廃村になった松木村(まつぎむら)跡を流れる松木川の上流にあり、足尾銅山の誕生で、煙害や山火事などで木の生えない岩峰の谷となり(足尾荒廃地)、「日本のグランドキャニオン」とも呼ばれています。

 

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