『万葉集』には日本三古湯の有馬温泉(兵庫県神戸市)、白浜温泉(和歌山県白浜町)、道後温泉(愛媛県松山市)のほかに、九州の二日市温泉(福岡県筑紫野市)が登場。そして東日本ではわずかに1湯しか「温泉地」としての記述がなく、その唯一の古湯が、湯河原温泉です。
伊香保も9首詠まれていますが、湯が登場せず!

「足柄の土肥の河内に出づる湯の
世にもたよらに児ろが言はなくに」
(万葉集 巻十四 3368 詠み人知らず)。
足柄(あしかり)は、足柄(あしがら)の訛り、土肥の河内に湧く湯というのは、湯河原・真鶴一帯が土肥(どい)と呼ばれた地、河内は谷間の地ということなので、湯河原カルデラの底に湧く湯河原温泉のことだと推測できるのです。
詠み人知らずですが、内容は「足柄の土肥の谷間に湧き出る湯のように、ほんのちょっとでも揺らぐ気持ちをあの娘は言ったわけでもないのに(心配だ)」という切ない恋心を詠んだ歌。
江戸時代後期の文化年間(1804年〜1818年)に刊行された温泉番付『諸国温泉功能鑑』では、東の前頭筆頭が豆州湯河原。
大関・上州草津の湯、関脇・野州那須の湯、小結・信州諏訪の湯の方が上位なのですが、『万葉集』が編纂された奈良時代以前には、東国の温泉地はまだまだ知られざる秘湯だったのかもしれません。
東日本では、伊香保温泉も『万葉集』に登場とPRされています。
万葉集巻一四には、伊香保を歌った歌が9首も含まれ、伊香保温泉ではそれを石に刻んで「万葉歌碑めぐり」も楽しめるのです。
伊香保として登場するのは「伊香保ろ」伊香保嶺(いかほね)という榛名山だったり、「伊香保の沼」という榛名湖だったりして、9首のうち6首が榛名山、1首が榛名湖、残り2首が「伊香保風」(群馬名物の空っ風)と「伊香保せよ」(伊香保の夜)で湯に関する言葉が出てこないのです。
榛名山、榛名湖は登場しても、明確に伊香保の「湯」が登場しないので、『万葉集』に登場する温泉地とはいえず、湯河原が東日本で唯一の温泉地ということになるのです。
湯河原温泉の中心には万葉公園が整備され、事前予約制の日帰り温泉「惣湯テラス」も営業。
万葉公園の園内には、『万葉集』に登場する草木が植えられていて、散策が可能。
「万葉洞門」を抜けると「渓流散策路」へと通じ、渓流沿いの散策を楽しむこともできます。


『万葉集』に登場する温泉地、東日本では、1ヶ所のみ! | |
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