「マルコ・ポーロ」のような埴輪が!

千葉県山武郡横芝光町、九十九里浜の内陸に位置する芝山古墳群のひとつが、姫塚古墳。墳丘長58.5mの小型の前方後円墳ですが、出土した人物埴輪(じんぶつはにわ)が、『東方見聞録』を著したマルコ・ポーロのような、中世の西洋人的な雰囲気なのです。6世紀後半に制作された埴輪なのになぜ? と疑問を生みます。

三角形の顎髭は千葉県と茨城県の地域的特性!

墳丘北側で人物や馬の形象埴輪が倒れてはいたものの、並んだ状態で4群に分かれて発掘され、保存度は極めて良好でした。
このうちの第1群は笠をかぶった馬子、鞍を着けた馬4頭、武人5体が出土していますが、とくに顎鬚(あごひげ)をもった双脚の男性像の一群が、中世の西洋人を思わせるような雰囲気なのです。

とくに長く伸ばした顎髭と、顔の両側に垂らされたカールされたような髪の毛、そしてその顔立ちは、『東方見聞録』で黄金の国ジパングを紹介したマルコ・ポーロといわれてもうなづけるレベルです。

18世紀のヴェネツィアの宮廷女官であるヤン・ファン・グレーベンブロークの描いた『タタールの衣装に身を包んだマルコポーロ』にも似た雰囲気の埴輪です(TOPの画像は姫塚古墳出土の埴輪との比較)。

姫塚古墳は、古墳時代後期後半の築造と推測される前方後円墳で、埴輪の造形に関しても芸術的なレベルまでに達していた時代で、大刀や翳(さしば=従者が貴人にかざす長柄のついたウチワ)に関してもディテールまで表現されています。

つまり、出土した動物埴輪を見てもあまり誇張がなく、リアルな姿を描いていることから、美豆良(みずら)を結い、顎髭をたくわえ山高帽(やまたかぼう)を被った男子が当時の貴人の姿ということに。

美豆良は、髪の毛を両方の耳のあたりで紐で結わえて留めたもの。
古墳時代に中国から伝来しただろう髪型です。
しかも大きく長く下げるのは貴人や武人の「下げ美豆良」で、3世紀の『魏志倭人伝』にも邪馬台国では男性の髪型は美豆良と記されています。

髪型は古墳時代だとしても、豊かな顎髭に、山高帽という不思議な出で立ちから「ユダヤ人埴輪」と称して、帰化人・秦氏のルーツはユダヤ系で、古代イスラエルからシルクロード、中国を経て倭国にたどり着いたと人々とする説まで登場しています。

鍔(つば)付の帽子をかぶった埴輪は群馬県などの古墳からも出土していますが、実は山高帽自体の埴輪も波志江今宮遺跡7号墳(伊勢崎市)からの出土例があるので、6世紀の関東では山高帽が普及していたことがわかります。

顎髭の埴輪は、非常に珍しく千葉県以外では茨城県の中台2号墳から出土するだけで、やはり古代の千葉、茨城には逆三角形の髭を伸ばした集団がいたことが推測できるのです。

こうした埴輪には 「専門家や研究者が気づかない魅力が隠されている」と近年、再注目されています。

「芝山町立芝山古墳・はにわ博物館」の常設展示室は令和3年4月1日リニューアルオープンし、殿塚・姫塚出土埴輪が集結しており、実物を眺めることができます。
令和6年8月27日には国の重要文化財に指定され、「マルコ・ポーロ」のような埴輪も、ますます注目度も高まっています。

「マルコ・ポーロ」のような埴輪が!
所在地 千葉県山武郡芝山町芝山438-1
場所 芝山町立芝山古墳・はにわ博物館
関連HP 芝山町立芝山古墳公式ホームページ
電車・バスで 芝山鉄道芝山千代田駅、または、JR松尾駅から芝山ふれあいバスで芝山仁王尊下車、徒歩10分
ドライブで 圏央道松尾横芝ICから約4.5km
駐車場 24台/無料
問い合わせ 芝山町立芝山古墳・はにわ博物館 TEL:0479-77-1828/FAX0479-77-2969
掲載の内容は取材時のものです。最新の情報をご確認の上、おでかけ下さい。

 

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