伊勢古市参宮街道資料館

伊勢古市参宮街道資料館

伊勢神宮の外宮と内宮を結ぶ街道沿いにある古市は、伊勢参りの際の精進落としの場所として、庶民の伊勢参拝の隠れた目的の地でもあり、江戸の吉原、京都の島原に並ぶ三大妓楼に挙げられるほどの賑わいを見せていました。その古市の繁栄を今に伝える資料館が伊勢古市参宮街道資料館です。

伊勢参りの精進落としの街・古市を紹介

伊勢古市参宮街道資料館
実際の伊勢参宮に使われた柄杓
伊勢古市参宮街道資料館
「大々神楽」の看板

「伊勢を目ざした人々のホンネは、旅に出るチャンスというのも大きかった」というのは、世古富保館長の話。
2階建ての資料館館内には、妓楼や遊女たちの歴史資料や、古市が中心となり盛んになった伊勢歌舞伎の台本や舞台衣装など、伊勢参りに関する興味深い資料が展示されています。

入口に展示されているのは古びた柄杓(ひしゃく)。
しかし実は、この柄杓は旅人が自由に往来できなかった江戸時代の伊勢参宮抜け参りの貴重なアイテムだったのだとか。
「このどこにでもあるような柄杓を手にさえして伊勢を目ざせば、誰でも関所をフリーパスという暗黙の了解があったのです」(世古富保館長)。
それをうらづけるように、館内に展示される錦絵にもちゃんと庶民がこぞって柄杓を手にして、伊勢に向かう姿が描かれています。

伊勢参宮の人々は、伊勢講と呼ばれる現代の旅行代理店のような講中と呼ばれる信仰者の集まりを組織し、その講中を利用して伊勢をめざしました。
伊勢講のもっとも豪華なプランが「大々神楽」で、伊勢に入っては、御師の家での豪華な料理と接待が期待できたのです。
館内には大坂の豪商などが利用した「大々神楽」の看板も展示されています。

伊勢参りというと、精進落しと称して遊郭で遊ぶというイメージもあります。
一昔前の日本の団体旅行のようなイメージですが、
「江戸時代の伊勢参りは、女性だけのグループもあり、古市の町は男女ともに楽しめる町だったんです」
と、世古富保館長は解説します。
伊勢歌舞伎は、若い役者の登竜門でもあり、千両役者が興行したのだとか。
上方役者の初代・沢村長十郎は、地方の旅芝居で修行を積み、その仕上げとして伊勢・古市で評判となり、京へ出て名人といわれるまでになりました(『役者論語』)。
人気の演目は、『義経千本桜』、『仮名手本忠臣蔵』だったことが史料から判明しています。

「歌舞伎座2軒、妓楼76軒が参宮街道沿いに軒を連ね、江戸の吉原、京の島原と並ぶ繁栄をみせた」というそんな古市の町も明治4年に御師制度が廃止され、一気に衰退。
往時の繁栄ぶりは、この資料館の展示史料に偲ぶのみとなっています。

古市の町並みにも、備前屋、油屋、杉本屋など有名な遊郭の跡地には表示があるので、あわせて町並み散策も楽しみたい場所です。

伊勢古市参宮街道資料館
名称 伊勢古市参宮街道資料館/いせふるいちさんぐうかいどうしりょうかん
所在地 三重県伊勢市中之町69
関連HP 伊勢古市参宮街道資料館公式ホームページ
電車・バスで 近鉄宇治山田駅から三交バス浦田町行きで12分、山上前下車、すぐ
ドライブで 伊勢自動車道伊勢西ICから約800m
駐車場 10台/無料
問い合わせ 伊勢古市参宮街道資料館 TEL:0596-22-8410
掲載の内容は取材時のものです、最新の情報をご確認の上、おでかけ下さい。

取材協力/伊勢古市参宮街道資料館

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