埼玉県秩父郡小鹿野町を流れる赤平川河岸の崖が、ようばけ。「はけ」とは、崖の古語で、畑仕事をしていて、日が落ちてもしばらく残照で輝くこの大きな崖を見て、陽(ひ)の当たる崖という意味で「ようばけ」と名付けられたもの。秩父盆地層群秩父町層の露頭で、秩父ジオパークのジオサイトにもなっています。
宮沢賢治も生徒を連れて訪れた、秩父町層の大露頭
ようばけは、秩父盆地の中央部から南東にかけて広く分布する秩父町層(新第三紀の地層=下部は、砂岩や泥岩で、上部は泥岩と礫岩で構成)の大露頭で、高さ100m、幅400mに及ぶ露頭は、550万年前の秩父町層が侵食されてできたもの(13万年前の赤平川の流れは今よりも50mほど高い場所にあったと推測)。
「日本の地質百選」にも選定される秩父を代表する露頭となっています。
また、暖流が流れ込んだ暖かな海底に堆積した秩父町層からは、パレオパラドキシア、チチブクジラ、サメ、ウミガメなどの脊椎動物の化石が出土。
ようばけの対岸、西側には「おがの化石館」が建ち、世界の奇獣と呼ばれるパレオパラドキシア、新種として認定されたチチブサワラ、小鹿野町内外から産出の化石などを展示しています。
また、「おがの化石館」敷地内には、大正5年9月2日~9月9日、盛岡高等農林学校の地質調査旅行でようばけを訪れた宮沢賢治と、親友の保阪嘉内(ほさかかない=『銀河鉄道の夜』のカムパネルラのモデルとも)の友情の歌碑が立っています。
大正5年9月4日、本陣寿旅館(現・小鹿野町観光交流館)へ宿泊した宮沢賢治は、ようばけを訪れ、「さはやかに 半月かゝる薄明の 秩父の峡の かへり道かな」という歌を残し(保阪嘉内に宛てた1枚の葉書からようばけ探訪と推測できます)、翌年、保阪嘉内も盛岡高等農林学校の地質見学旅行でようばけを訪れて、「この山は 小鹿野の町も見へずして 太古の層に 白百合の咲く」と歌っているのです(2つの句碑を並べて「おがの化石館」敷地内に建立)。
赤平川の蛇行する場所にあるので、南側の河岸、秩父ふるさと村(有料施設)には「ようばけ展望台」も設置、全体を一望にできます。
赤平川の上流側には、藤六の海底地すべり跡、取方の大露頭もあり、時間が許せば、あわせて「巡検」を。
ようばけ | |
名称 | ようばけ/ようばけ |
所在地 | 埼玉県秩父郡小鹿野町下小鹿野453地先 |
関連HP | 小鹿野町公式ホームページ |
電車・バスで | 西武鉄道西武秩父駅、秩父鉄道秩父駅から西武観光バス栗尾ゆきで泉田下車、徒歩15分 |
ドライブで | 関越自動車道花園ICから約25km |
駐車場 | おがの化石館駐車場を利用 |
問い合わせ | おがの化石館 TEL:0494-75-4179 |
掲載の内容は取材時のものです。最新の情報をご確認の上、おでかけ下さい。 |
最新情報をお届けします
Twitter でニッポン旅マガジンをフォローしよう!
Follow @tabi_mag