江戸時代中期、徳川吉宗により行楽地として開発された、王子・飛鳥山周辺(現・東京都北区)。石神井川(しゃくじいがわ=滝野川)を中心に武蔵野台地の崖線に滝が懸かり、「王子七滝」として庶民にも人気の納涼地となっていました。この七滝うち、現在唯一残るのが、名主の滝。滝周辺は名主の滝公園として整備されています。
江戸時代に名主が造った滝が庭園に現存!
「王子七滝」は、標高20m〜30mの武蔵野台地(本郷台)と標高10m以下の沖積平野である荒川低地との間の崖線に、滝が懸かるもの。
そのうち、唯一現存する名主の滝も、残念ながら湧水ではなく、地下水をポンプアップして流しています。
台地上(名主の滝公園背後の高台)には江戸時代同様に将軍が日光社参で使った日光御成道(岩槻街道=赤羽岩淵宿で荒川を渡船で渡河)が通っています。
安政年間(1854~1860年)、王子村の名主・畑野孫八が自らの屋敷地に滝を築き、茶を栽培し、一般に開放したのが、名主の滝のルーツ。
落差8mの男滝、女滝をはじめ、独鈷の滝、湧玉の滝という、4つの滝が配された池泉回遊式庭園ですが、現在のように整備・開発されたのは、明治の中頃から(現在は男滝のみ稼働)。
明治時代の半ばに貿易商・垣内徳三郎の所有となり、塩原(栃木県)の風景を模して庭石を入れ、ヤマモミジなどを植栽、渓流を配した庭へと整備公開したのです。
初夏にはホタルが舞う、自然環境が自慢
昭和13年には精養軒が食堂やプールなどもつくり、「王子名園 名主の瀧遊園地」として一般に公開しましたが戦災で焼失し、戦後は荒廃。
昭和35年に東京都が購入し都立公園となり、現在は北区が所管しています。
武蔵野台地末端の崖を巧みに利用した庭園には、100本ものヤマモミジとスダジイ、ムクノキ、80本ほどのイチョウ、50本ほどのケヤキなどの木々が生い茂り、ヘイケボタルも棲息。
春の桜、夏の滝涼み、秋の紅葉(ヤマモミジの紅葉は11月)、冬の雪景色と椿と、四季折々に楽しめる自然豊かな公園となっています。
初代広重の『絵本江戸土産』に描かれた男滝と女滝
浮世絵師・歌川広重(初代)の『絵本江戸土産 -王子の滝 其二 同所滝岩屋の弁天 十條の里女滝男滝』に描かれたという現在の名主の滝公園の女滝と男滝。
そして滝岩屋の弁天は、金剛寺裏手にあったという弁天の滝。
崖下にある洞窟(現在は石神井川護岸の裏側)に祀られていた弁財天が岩屋弁天です。
江戸時代から滝遊びや紅葉の見物さらに岩屋弁天の参拝客で賑わったといいます。
名主の滝公園 | |
名称 | 名主の滝公園/なぬしのたきこうえん |
所在地 | 東京都北区岸町1-15-25 |
関連HP | 北区公式ホームページ |
電車・バスで | JR・東京メトロ南北線王子駅から徒歩10分 |
ドライブで | 首都高速王子北ランプから約1.2km |
駐車場 | なし |
問い合わせ | 名主の滝公園 TEL:03-3908-9275 |
掲載の内容は取材時のものです、最新の情報をご確認の上、おでかけ下さい。 |
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