日本は「世界一の豪雪国」ですが、人里での積雪世界一、そして測候所のある山岳地での世界最積雪深記録も有しています。人里での世界記録は、新潟県上越市の8m18cm、そして名実ともに世界一の積雪記録は、滋賀県米原市、岐阜県揖斐川町・関ケ原町にまたがる伊吹山の山頂(伊吹山観測所)での11m82cmです。
大雪は、対馬海流(暖流)の影響
日本列島、とくに日本海側が豪雪地帯なのは、日本海を暖流(対馬海流)が流れているから。
新潟県沖を流れる対馬海流は、冬でも海水温は10度ほどあります。
上空の寒気との温度差で、対馬海流からは、温泉の湯気のように、たくさんの水蒸気が湧き上がり、脊梁山脈(せきりょうさんみゃく=新潟県では谷川岳など)にぶつかってたくさんの雪となるのです。
山にぶつかって里に大雪が降るのが、里雪型、山にぶつかった空気が上昇し、冷やされて山岳地帯に降るのが山雪型の降雪です。
つまりは、日本海が暖かい年ほど(対馬暖流の流量が多い年ほど)、大雪の可能性が大ということに(日本海があたたまるのにタイムラグがあるため8月~11月に対馬暖流の流量が多い場合に、12月~2 月の降水量が増加するというデータがあります)。
有名な蔵王の樹氷も、誕生のメカニズムは同じで、日本海を流れる暖流(対馬海流)が発生装置の基盤になっているのです。
世界最大の積雪記録は11m82cm
そんな大雪のメカニズムを学んだところで、過去の記録を紹介しましょう。
まずは、人里での世界記録から。
昭和2年の年明けから、日本海側は大雪で、新潟県上越地方などでは、40日間に渡って雪が降り続けました。
その結果、昭和2年2月13日には、新潟県中頚城郡寺野村(現在の上越市板倉区)で、積雪深8m18cmというとんでもない積雪記録を打ち立てたのです。
測候所の公式な記録ではありませんが、当時の高田測候所の気象報告に「寺野27尺(8m18cm)」と記されているので、記録上の最大積雪深になっています。
豪雪で知られる青森県の酸ヶ湯温泉でも3mくらいの積雪深なので、いかに豪雪であるかがよくわかります。
第二次世界大戦末期の昭和20年2月12日、国鉄飯山線・森宮野原駅(もりみやのはらえき)では、7m82cmの積雪深を記録(これが今でも国鉄・JRの最高記録です)。
飯山線沿線は、豪雪地帯として知られ、冬の出入りは2階からという特殊構造の家屋が並んでいます。
測候所のある山岳地帯では、伊吹山の一等三角点(1377.3m)横にあった滋賀県立彦根測候所付属伊吹山観測所(昭和4年5月に国に移管され中央気象台付属伊吹山測候所)が昭和2年2月14日に記録(視認記録)した積雪深11m82cm。
標高わずか1300mクラスの山ながら、琵琶湖を眼下にする伊吹山は日本海から太平洋(伊勢湾)へ、冬の季節風が吹き抜ける通り道。
山麓の関ヶ原は、東海道新幹線の「冬の難所」として知られ、「伊吹おろし」とともに名古屋の市街地にもチラホラと雪を降らせます。
関ヶ原は、今も雪は多いのですが、地元の人の話では、「戦前は、関ヶ原でもスキーができるほど積もった」のだとか。
伊吹山は、関西地方でのスキー発祥の地でもあり、かつては3合目で、伊吹山スキー場も営業していました。
伊吹山測候所は、平成13年3月31日に閉鎖され、平成22年に解体されているので、たぶん、この積雪深11m82cmという記録が、不滅の記録となると思われます(南極、北極も8mほどしか積もりません)。
【知られざるニッポン】vol.61 積雪量世界一の記録は、伊吹山山頂に! | |
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