昭和レトロな温泉街、風情ある共同浴場が人気の肘折温泉(山形県大蔵村)。実はこの肘折温泉、気象庁・火山噴火予知連絡会が認定する活火山111ヶ所のひとつであることは、あまり知られていません。大蔵村には立ち寄り湯の「黄金温泉 カルデラ温泉館」がありますが、この「カルデラ」というのが大きなヒントになっています。
内径2km、深さ200mのカルデラ内に肘折温泉が湧く
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気象庁・火山噴火予知連絡会による活火山の定義は、過去1万年以内に火山活動があったかどうか。
もし火山活動の痕跡や有史以来の記録があれば、活火山に認定され、それが認められなければ、「それ以外の火山」に分類されています(現在では休火山、死火山という分類はありません)。
肘折温泉一帯は、気象庁・火山噴火予知連絡会は活火山「肘折」に認定。
地形図を見ると肘折温泉一帯は巨大な円形の凹地で、その凹地の東端に肘折温泉街があることがわかります。
この深さ200mの凹地が肘折カルデラ。
1万年ほど前にここにあった火山体が噴火を繰り返し、山体内が空洞化して陥没、内径2km、外径3kmの凹地(カルデラ)が生まれたもの。
北側8km、南側5kmにわたって火砕流台地が広がっています。
現在、噴気活動はありませんが、数十万年〜100万年という火山の寿命からすれば、1万年は人間の1年にすぎないことに。
カルデラの東端(肘折温泉)と中央部西寄りに温泉(黄金温泉)が湧いています。
黄金温泉は、明和年間(1764年〜1780年)に大蔵鉱山で金の採掘が始まった際に開湯した歴史ある温泉で、旅館「金生館」、日帰り温泉「カルデラ温泉館」が建っています(泉質はナトリウム-塩化物・炭酸水素塩温泉)。
火山と金鉱脈は密接な関係があり、実は火山活動によってマグマが地下水と反応することで金鉱脈が形成されるので、火山の恩恵のひとつ。
肘折カルデラの内部で現在噴気を上げる場所はありませんが、地熱は高く、活火山であることにかわりはありません。
豪雪に埋もれた肘折温泉街からは、活火山のイメージはありませんが、蔵王山、鳥海山などと同じ噴火警戒レベル1(活火山であることに留意)となっています。
肘折火山は、既存の火山体がない場所で突然として新期に噴火し、火砕流を噴出、カルデラが形成されましたが、短期間で活動を終焉、その後静寂を保っています。
ハザードマップなどは作成されておらず、現状ではほとんど静穏な火山という状況です。
気象庁も噴火の兆候は認められないとしており、噴火の可能性は低いと考えられています。
ちなみに肘折火山は、「非火山性の地域における新規火山の可能性」という研究テーマで科学的な調査、分析が行なわれ、将来の火山活動の評価にも一役買う存在にもなっています。
画像協力/山形県
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昭和レトロな温泉街が人気の肘折温泉(山形県)、実は活火山だった! | |
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