気象庁と火山噴火予知連絡会が活火山に認定する111のうち、九州には意外にも無名な活火山があります。その筆頭が「米丸・住吉池」(よねまる・すみよしいけ)。鹿児島県の中央部、錦江湾北岸・姶良市(あいらし)の平野部に位置するふたつの凹地。マグマ水蒸気爆発によって形成されたマール(円形の火口)です。
水蒸気爆発で誕生したふたつのマール
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米丸マール、住吉池マールと呼ばれるふたつのマール(円形の火口)で、男鹿半島の一ノ目潟・二ノ目潟・三ノ目潟(秋田県男鹿市)、伊豆大島の波浮港(はぶみなと/東京都大島町)、伊豆・一碧湖(静岡県伊東市)などもマールです。
「米丸・住吉池」は、2003年1月の火山噴火予知連絡会による活火山見直しで、過去1万年以内に火山活動のあったものが活火山という定義に変更されたことで、新たに活火山の仲間入りしたニューフェイスで、地元・鹿児島県でも活火山というイメージはあまりありません。
マールは地中のマグマと水が接触して起こる水蒸気爆発で誕生した火口。
錦江湾北部は噴煙上げる桜島を南端とする姶良カルデラで形成されていますが、地下にはマグマ溜まりがあり、それからのマグマが水と接触して水蒸気爆発が起こるということに。
霧島火山と姶良カルデラの間に位置していますが、関係性は明らかではありません。
地形的には姶良カルデラ縁の外側に位置するので、姶良カルデラの側火山的な存在の可能性も。
米丸は、空撮写真で見るとはっきりと分かる直径約1kmの円形盆地で、8000年〜8100年前、温暖な縄文時代に起こったマグマ水蒸気爆発で誕生した火口の跡です。
縄文時代は温暖だったため、現在よりも海の水位が2m〜3mほど高く(縄文海進期)、内陸まで海が入り込んでいたこともあって、水蒸気爆発が発生したと推測できます(米丸のあたりが海岸線でした)。
その後、堆積が進み湿地化しましたが、泥が深いため牛馬による耕作もできなかったため、明治35年に配水施設を築いてようやく水田となり、昭和59年の圃場整備(ほじょうせいび)で区画化された美しい水田に代わり、火口としての面影を失っています。
今も火口湖らしい雰囲気を残す住吉池は、米丸の爆発に先立つ8200年前の水蒸気爆発で誕生した火口。
直径500m、水深30mの風光明媚な火口湖となっています。
江戸時代にため池としての機能を強化するために導水作業が行なわれ、周辺の田畑を潤す水瓶になっています。
住吉池から流出する住吉池用水路も寛永9年(1632年)完成という歴史あるもの。
米丸、住吉池とも有史以来の記録に残る火山活動はなく、住吉池では住吉池公園キャンプ村も整備され、キャンプも可能。
日本一の巨樹「蒲生の大クス」がある蒲生八幡神まで、2.5km、往復1時間のウォーキングも可能です。
米丸と住吉池の間には10万年以前に火山活動が行なわれた青敷火山(あおじきかざん)もありますが、以降、火山活動がないため、活火山ではなく「それ以外の火山」に分類されています(火山の寿命は100万年ほどあるので、火山活動の可能性がないわけではありません)。
標高275.5mのスコリア丘(三等三角点「青敷」)で、姶良火山の一部とする説もあります。
さらに北西の藺牟田池は、藺牟田火山の火口湖なので、かつては一帯も活発な火山活動があったことがよくわかります。
まさに鹿児島県は世界一ともいえる火山密集地帯なのです。
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鹿児島県にある知られざる活火山、「米丸・住吉池」とは!? | |
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