島根県の雑煮は、醤油仕立てのすまし汁というのが定番。餅は西日本の食文化なので丸餅です。旧国でいえば東の出雲国(いずものくに)、西の石見国(いわみのくに)、沖の隠岐国(おきのくに)ですが、すまし汁の出汁(だし)は、カツオ節、アゴ、いりこ、ハゼなど家庭によって異なります。
正統派は、貴重で高価な「十六島のり」を使用

東の出雲地方の具は岩のりとカツオ節のみというシンプルさですが、かつては出雲市の十六島(うっぷるい)で産する岩のり「十六島のり」を使うのが一般的でした。
12月~2月の厳冬期に採れる岩のりで、奈良時代や平安時代には朝廷への献上品となった高級品で、現在では手に入りにくいため、もみのりで代用することも多くなっています。
この岩のりとカツオ節の風味の相乗効果で、出雲らしい「すまし汁」が生まれるのです。
出汁もかつてはドウメ節(ウルメイワシを蒸して乾燥させた煮干し)で取りましたが、今では手軽なカツオ節などがポピュラーに。
西の石見地方では、同じ「すまし汁」でも干しアユの出汁を使うケースもあり、食文化の違いを感じます。
丸餅は焼かずに入れますが、煮すぎると柔らかくなり過ぎるため、別鍋でゆでておく場合も。
かつては丸餅を正月三が日に味わい、4日めにはよもぎなどを入れた「てんこ餅」(まぜ餅)を食すという習慣もありましたが、今では廃れつつあります。
これは白い餅が贅沢品でハレの日だけ味わうものだったためで、丸餅がスーパーやネットで手軽に購入できる現在では、あえて変える必要もなくなったのです。
ちなみに出雲地方の一部家庭では、鳥取県の雑煮に似た小豆雑煮(あずきぞうに)という家庭もあります。
| 【全国雑煮図鑑】 格式高き岩のり入り! 島根県「すまし雑煮」 | |
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