日本三霊橋とは!? 渡った先が聖なる地

日本三霊橋

霊山・霊場といわれるような聖地には、俗界と聖なる地とを分ける場所が必ずありますが、仏教思想で現世とあの世を隔てる境目にあるとされる三途の川(さんずのかわ)を反映して、多くの霊場では橋がその役割を担っています。栃木県・日光の神橋、富山県・立山の布橋、和歌山県・高野山奥之院の一の橋が日本三霊橋です。

橋は「俗界と聖域」を分ける場所

『那智参詣曼荼羅』
『那智参詣曼荼羅』に見る俗界と聖域の境

熊野信仰の聖地である熊野那智山を描いた『那智参詣曼荼羅』にも参詣道途中の橋が描かれていますが、最初に渡る川の水で二の瀬橋が身を清める禊(みそぎ)の地、そして次に渡る聖俗を振り分ける境界の瀬に架かる「振架瀬橋」で、熊野九十九王子の最後の一社である多富気王子(たふけおうじ)が祀られ、大門坂へと通じていました。

伊勢神宮では、宇治橋ではなく、伊勢街道、伊勢本街道、熊野街道が合流する要衝に位置する筋向橋(すじかいばし)が聖俗の境になっていました。
今ではその姿を失っていますが、往時は筋向橋を渡るとガイド役の御師(おんし)の家が建ち並ぶ社前だったのです。

多くの社寺では、こうして橋を俗界と聖なる霊界とを分ける地にしたことが多く、それをつなぐのが橋の役割でした。

日本三霊橋とは!?

神橋|日光山

所在地:栃木県日光市上鉢石町
由来:日光開山の勝道上人(しょうどうしょうにん)が日光を訪れた時、大谷川の急流に行く手を遮られましたが、神仏に祈り、蛇を川に投げ入れると橋になったという伝説の橋
備考:徳川家康を神仏習合の東照大権現として祀った日光東照宮創建以前からあるので、日光山が補陀洛山(ふだらくさん)、つまりは観音の浄土であるという仏教思想から、大谷川に架る神橋は世俗の境だったということに
江戸時代には日光三山(男体山・女峰山・太郎山)、三仏(千手観音・阿弥陀如来・馬頭観音)、三社(新宮・滝尾・本宮)の入口でした

神橋

神橋

栃木県日光市、日光山内の入口、大谷川(だいやがわ)に架けられた朱塗りの木橋が神橋(しんきょう)で、幅6m、長さ26.42m、水面からの高さは10.6m。その昔、日光開山の勝道上人(しょうどうしょうにん)が日光を訪れた時、大谷川の急流に行く手

布橋|立山信仰

所在地:富山県中新川郡立山町芦峅寺
由来:立山信仰において、この芦峅寺から奥は聖域(江戸時代、立山は山中に地獄や浄土があるあの世の世界と考えられていました)で、姥堂川が聖域と俗世を分ける境でした
備考:芦峅寺の宿坊では、女性の信徒に対しては、越中立山が女人往生の霊場であることを強調し、血の池地獄からの救済と極楽往生の願いをかなえる『布橋灌頂会』の儀式への結縁(けちえん)を積極的にPR。『布橋灌頂会』で女性信者は、布橋に敷かれた白布の上を目隠しで渡り、悪人は橋から谷川へ転落するといわれていました

布橋

布橋

宿坊が並び立山信仰の拠点として栄えた富山県立山町芦峅寺地区。立山信仰において、この芦峅寺から奥は聖域(江戸時代、立山は山中に地獄や浄土があるあの世の世界と考えられていました)で、姥堂川が聖域と俗世を分ける境に。つまり姥堂川に架る布橋は、聖域

高野山奥之院一の橋|空海入定信仰

所在地:和歌山県伊都郡高野町高野山555
由来:空海(弘法大師)は、肉身をこの世にとどめ、深い禅定に入り、救いの手を差し伸べているという入定信仰(にゅうじょうしんこう)を背景に、空海の入定する奥之院への入口に架る橋
備考:弘法大師は参詣する人々を、ここまで送り迎えしてくれると言い伝えられ、一礼してから橋を渡るのがしきたり

高野山 一の橋

高野山 一の橋

高野山・金剛峯寺の信仰の中心で空海(弘法大師)が禅定に入るという御廟所のある聖地が奥之院。正式の参拝は、一の橋から参道を歩くもの。一の橋から御廟まで2kmの参道には、20万基を超える諸大名の墓石、祈念碑、慰霊碑が配され、樹齢1000年という

掲載の内容は取材時のものです。最新の情報をご確認の上、おでかけ下さい。
日本三名橋

日本三名橋とは!?

日本三名橋に関しては諸説あり、選者も定かでありません。一般的に東京都中央区の日本橋、山口県岩国市の錦帯橋、そして長崎県長崎市の眼鏡橋と江戸時代に架橋された3つの橋が三名橋とされています。日本橋の代わりに二重橋(東京都)とする説もありますが、

日本三奇橋

日本三奇橋とは!? その奇抜さに脱帽!

山あり谷ありの日本列島にはたくさんの橋がかかっていますが、歴史的に日本三奇橋といわれるのは、甲州(現・山梨県大月市)の猿橋、防州・岩国(山口県岩国市)の錦帯橋、越中新川郡(富山県黒部市)の愛本橋。愛本橋は現存しないため、その代りに日光の神橋

 

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

最新情報をお届けします

Twitter でニッポン旅マガジンをフォローしよう!

よく読まれている記事

こちらもどうぞ