2003年に活火山の仲間入り! 「世界文化遺産」萩にある不思議な「阿武火山群」とは!?

世界遺産「明治日本の産業革命遺産―製鉄・製鋼、造船、石炭産業―」の構成資産である松下村塾、萩城下町、萩反射炉などがある山口県萩市。実は2003年に気象庁と火山噴火予知連絡会により、活火山に指定された阿武火山群があります。しかも世界的にも特異で不思議な火山であることはあまり知られていません。

2月中旬~3月下旬にかけて椿の見頃の笠山も活火山!

萩市観光課公式チャンネル「はぎたび-hagi tabi-」
阿武火山群
平らな溶岩台地、肥島(ひしま)、羽島(はじま)にも注目!

火山は、かつてのように活火山、休火山、死火山という分類はありません。
以前は、現在噴火または噴気活動を続けている火山を活火山、現在は活動していないが歴史時代に活動した記録が残っている火山を休火山、歴史時代の活動の記録がない火山を死火山と区分していましたが、年代測定法の進歩により火山の過去の活動が明らかになり、火山の寿命は長く、歴史時代の噴火活動の有無だけで分類することは意味がないことが判明したために、現在では「活火山」と「それ以外の火山」に分けられています。

活火山の定義も、以前は有史(およそ2000年以内)とされていましたが、御嶽山(1979年に水蒸気噴火)のように長期にわたって活動を休止した後に活動を再開した事例もあるため、現在では過去1万年に火山活動のあった火山となっています。

実は、この見直しによって、活火山の仲間入りしたのが萩市の阿武火山群です。
阿武火山群は、200万年前から活動した50ほどの小さな火山の集まりで、地下深くにある1ヶ所のマグマだまりから、いったん噴火活動を終えると次は違う場所に活動を移すことを繰り返したため、山体の小さな火山の集合体が生まれたのです。

阿武火山群の火山のほとんどは1万年より前に噴火したもので、その意味では「それ以外の火山」に含めてもいいのですが、もっとも新しい火山活動が行なわれた笠山が、8800年前のストロンボリ式噴火であることから「活火山」の仲間入りとなったのです。

火山の寿命は人間のほぼ1万倍で数十万年〜100万年とされるので、1万年前ということは人生にすれば「去年の話」という感じになるのです。

その笠山は城下町・萩から日本海に突き出した陸繋島。
山頂に直径30m・深さ30mの小噴火口を持つ、標高112mの小さな火山で、「笠山自然研究路」で山頂まで到達できます。
また有名な笠山椿群生林(10haの広さに2万5000本のヤブツバキが自生)があり、2月中旬~3月下旬にかけて椿の見頃を迎えます。

笠山の沖、日本海に浮かぶ大島、櫃島(ひつしま)は、いずれも平ぺったい台地上の火山島ですが粘り気の大きい安山岩やデイサイトでできた溶岩台地。
粘り気が小さい玄武岩は、ゆるやかに広がって溶岩台地を生み出し、粘土の高い溶岩はドームをつくりやすいのですが、粘り気が比較的大きい安山岩やデイサイトが小さな溶岩台地を作っている例は世界中でもこの阿武火山群だけです。

相島、尾島、肥島(ひしま)、羽島(はじま)も火山島で、いずれも平らな台地上の島。
笠山の山頂から日本海を眺めると、こうした平らな島が海に並ぶ不思議な景観を目にすることができるのです。

笠山に代表される阿武火山群の噴火予報はレベル1(活火山であることに留意)となっていますが、今後、噴火活動が再開する可能性もある活火山なのです。

萩笠山椿群生林
萩笠山椿群生林
2003年に活火山の仲間入り! 「世界文化遺産」萩にある不思議な「阿武火山群」とは!?
掲載の内容は取材時のものです。最新の情報をご確認の上、おでかけ下さい。
笠山

笠山

山口県萩市、萩市街の北に位置する笠山は気象庁が活火山と認定する阿武火山群(あぶかざんぐん)に属する火山。越ヶ浜から突き出した標高112.2mの小さな火山で、山頂には直径30m、深さ30mの噴火口があります。山頂近くには展望台も設置され、萩沖

笠山椿群生林

笠山椿群生林

山口県萩市、日本で一番標高の低い活火山といわれる笠山(標高112.2m)の北西端に位置する虎ヶ崎周辺に広がる椿の群生林(自然林)が笠山椿群生林。10haの広さに約2万5000本のヤブツバキが自生し、例年2月第3土曜から3月の春分の日まで、椿



 

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