東京随一の「鉄道急勾配」は、かつての信越本線碓氷峠越えと同じ急登!

日本の鉄道の最大勾配は、一般的な路線で35‰(パーミル)と定められています。‰(パーミル)とは1000m走った場合の高度差で、35‰もかなりの登坂となります。都電荒川線(東京さくらトラム)の王子駅前から飛鳥山に向かう区間が、実は東京都内最大勾配で、かつての信越本線碓氷峠越えと同じ急登です。

飛鳥大坂を登る都電は、碓氷峠越えと同じ66.7‰

通常のレールの上を走る鉄道で、日本一勾配が急なのは、小田急箱根鉄道線(箱根登山鉄道)で、箱根湯本の駅を出た途端に80という急坂が始まります。
乗車していても車内の端と端で標高差がわかるくらいの傾きで、急坂が実感できます。

東京の都心部分も、実は武蔵野台地の谷と山があるため、都心を一周する山手線も田端駅から駒込駅に向かって、坂を上ります。
実は地下を走る東京メトロや都営地下鉄も、地上の起伏の影響を受け(地上に建つ建造物の杭などもあるため)、東西線や副都心線では40‰という例外的な急坂があります。

その40‰を大きく越え、66.7‰という急坂が都電荒川線の王子駅前電停〜飛鳥山(あすかやま)電停です。
江戸時代、東に筑波山、西に富士を仰ぐ桜の名所として知られた飛鳥山ですが、飛鳥山は武蔵野台地東縁の崖上の景勝地。
京浜東北線が走る王子駅側は、崖下の隅田川へと続く下町低地(東京低地)で、往時は湿地や田んぼが広がっていた場所です。
飛鳥山の台地上から旧石器時代〜弥生時代の遺跡が発掘されているのは、海際の台地という環境から。

都電荒川線は、王子駅前を出て、早稲田方面に向かう時、京浜東北線や新幹線をくぐり、武蔵野台地への急坂に取り掛かります。
この坂は飛鳥大坂で、明治時代の『東京府村誌」にも「飛鳥山坂、本村(滝野川村)にあり、飛鳥橋の方に下る。長さ1町12間3尺、広さ3間、坂勢急なり」と記されています。
荷車泣かせの急勾配だった坂です。

ここに路面電車を通した王子電気軌道も、明治44年8月20日の開業時は、飛鳥山上(現・飛鳥山) 〜大塚で、大正2年4月1日に三ノ輪(現・三ノ輪橋)〜飛鳥山下(現・梶原)と分断して開業しています。
最後に開通したのが、この飛鳥大坂部分の王子〜飛鳥山で、大正4年4月17日のこと。
いかにこの飛鳥大坂克服が大事業だったかがよくわかります。

東京都電も前身の東京市電時代に九段坂(「石を以て横に階をなすこと九層」が名の由来)という難関があり、明治40年の開業時には迂回ルートを確保、関東大震災後に坂の改良が施されて、坂の中央に軌道が敷かれています(都電・九段線は昭和45年廃止)。

都電荒川線の飛鳥大坂の「坂登り」は、飛鳥山公園に架かる飛鳥山モノレール(あすかパークレール)「アスカルゴ」が眺める一等地ですが、残念ながら乗車時間が短いため、必ず都電がやってくるとは限りません。
運がいいと、都電と高速バスが並ぶという場合もあり、乗り物好きにはたまらないスポットとなっています。

東京随一の「鉄道急勾配」は、かつての信越本線碓氷峠越えと同じ急登!
掲載の内容は取材時のものです。最新の情報をご確認の上、おでかけ下さい。
東京さくらトラム(都電荒川線)

東京さくらトラム(都電荒川線)

三ノ輪橋停留場(東京都荒川区)と早稲田停留場(新宿区)を結ぶ全長12.2kmの路面電車が東京さくらトラム(都電荒川線)。王子電気軌道が前身で、専用軌道部分が多いことから奇跡的に残った都電で唯一の路線で、都内の路面電車が都電荒川線と、東急世田

飛鳥山公園モノレール(あすかパークレール)

徳川吉宗が山桜を植栽し、江戸時代から桜の名所として名高い、王子、飛鳥山公園(東京都北区)。飛鳥山と呼ばれるような「山」ゆえに、年配の人や妊婦などには階段が大きな障害に。そこで北区がバリアフリー化の波に乗って平成21年に開通させたのが、ユニー

 

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

最新情報をお届けします

Twitter でニッポン旅マガジンをフォローしよう!

よく読まれている記事

こちらもどうぞ