東京農工大などが発表、クマ被害の増大は「人口減と温暖化が原因」

東京農工大学大学院、クイーンズランド大学の国際共同研究チームは、過去40年間の日本で、ツキノワグマ、ヒグマなど大型の哺乳動物6種がなぜ分布域を拡大させているのかの要因を検証。人口減少による耕作地の放棄、そして気候変動の進行がクマ被害の増大を招いていると発表しています。

クマによる人身被害も増加

2025年は雪解けシーズンから、続々と熊の被害が報告されていますが、近年、危険鳥獣(ツキノワグマ、ヒグマ、イノシシ)がヒトの生活圏に出没し、人身被害が増加する傾向にあります。
環境省によれば、2023年度のクマによる人身被害は全国で198件(219人)。
この数字は、統計を取り始めた2006年度以降で最多、春先から熊の出没が相次ぐ状況に、今後もさらに被害が増大するのではと危惧されています。

秋田県では出没したツキノワグマを射殺したところ、執拗なクレームの電話が県庁にかかってきたことで、時の佐竹知事は、「もし私が電話を受けたら、相手を威嚇して『お前のところにクマを送るから住所を送れ』と言う」と発言、大きな話題となりました。

クマの市街地への出没が相次ぐ中、市町村の判断で特例的に市街地での猟銃の使用を可能とすることなどを盛り込んだ改正鳥獣保護管理法が、2025年4月18日(金)に参議院本会議で賛成多数で可決され、成立。
条件を満たせば、市町村がハンターに委託し、市街地での猟銃の使用が可能になりました。
猟銃の使用の対象はヒグマとツキノワグマ、そしてイノシシです。

クマ被害が増加するのは、人口減と気候変動が要因

近年、大型哺乳類の分布が急速に拡大しているのはなぜなのでしょう。
東京農工大学大学院、クイーンズランド大学環境学部の国際共同研究チームは、過去約40年間にわたる日本における全国規模の陸生の大型哺乳類(イノシシ、ツキノワグマ、ニホンカモシカ、ニホンザル、ニホンジカ、ヒグマ)の分布域の情報を用いて、大型哺乳類の分布の変化にどのような影響を与えているのかを検証。
その結果、全6種の大型哺乳類の分布域は顕著に拡大してきたことが判明したのです。

その結果から、分布域の拡大に影響すると考えられる要因を解析したところ、人間活動の低下および撤退に伴う耕作放棄地の増加、降雪量の減少が共通して各種の分布域の拡大に影響していることが示唆されたと発表したのです。

降雪量の減少の程度が大きい地域(高緯度の地域や高標高の地域)は、大型哺乳類の分布が拡大する傾向にあることがわかったのです。

千葉県は、沖縄を除いて唯一の熊の生息しない県ですが、イノシシによる農業被害額は増大しています。
研究チームは、「今後も人口減少の加速と気候変動の進行が、これらの野生動物の分布のさらなる拡大につながる可能性があります」、「各種の分布拡大に伴う人獣共通感染症の感染リスクの拡大など人間社会における公衆衛生や安全面での危険性も危惧されています」と警鐘を鳴らしています。

東京農工大などが発表、クマ被害の増大は「人口減と温暖化が原因」
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