富士登山より楽しい! 宝永遊歩道を歩こう

天上の薄い空気に苦しめられ艱難辛苦の富士登山に比べ、お手軽で、ファミリーにも楽しめ、かつ、富士登山以上にダイナミックな富士山の大自然を満喫できるというのが、宝永遊歩道。静岡県側の富士山スカイライン5合目(富士宮口5合目)を起点に、40分のトレッキングで宝永第2火口に到達します。

まずは森林限界を突破し、宝永第二火口を目指す

宝永遊歩道
山肌の緑色と茶色の境が森林限界
宝永遊歩道
起点となるのは表富士側・富士山スカイライン5合目

マイカーで到達できる日本最高所は、富士山スカイライン(静岡県道152号富士公園太郎坊線)の終点、5合目で、標高2380m。
ただし7月10日〜9月10日の富士登山期間中(富士山の静岡県側の開山期間)には、マイカー規制が実施され、水ケ塚駐車場などからシャトルバス、シャトルタクシーを利用します。

それでもトレッキングの起点はすでに標高2380mで、朝夕やガス(霧)がかかった際には上着が欲しいほどの冷え込みになります。
富士山スカイライン5合目(富士宮口5合目)からは蟻の行列のように登山者が富士山頂を目指しますが、意外に歩く人が少なく、静かなトレッキングが楽しめるのが宝永遊歩道です。

宝永遊歩道の入口は富士登山道とは異なり、レストハウスのある場所から少し三島側に歩いたブルドーザーの基地からスタートします。
40分ほどで宝永第2火口に到達しますが、スタート地点は樹林帯(森林限界で、風衝低木が茂ります)、ハイマツなどを抜けると、火山荒原となり、最後は草も生えない火口壁に到達します。

火山荒原でも夏場に見かけるのはオンタデ(木曽の御嶽に生育するタデという意味の和名)の白い花くらいで、花好きには少し物足りないかもしれませんが、それでも「巨大砂場登り」と化している富士登山に比べると、わずか40分間で、夏休みの自由研究には十分なほどの植物相の変化を観察できます。
しかも、メボソムシクイ、ルリビタキの声を聞き、ホシガラスを観察、ヨツバヒヨドリの花に吸蜜に来たアサギマダラを見ることができるのもこの間だけ。

ガスがかかって見通しが悪い場合(最悪はホワイトアウト状態になります)、三島側に積乱雲が発達した際(雷雨の可能性があり、逃げ場がないため危険です)には、ためらわず、来た道を5合目に戻りましょう。
往復だけでも十分に異世界を感じ取ることができます。

宝永遊歩道
宝永遊歩道の入口部分は森林帯で鳥の鳴き声を耳に(林床には花も)
宝永遊歩道
火山荒原で唯一見かけるオンタデ

宝永第一火口の圧倒的な迫力に驚愕!

宝永遊歩道
宝永山、新6合目への分岐点、眼前の火口が第一火口

晴れている時間が続きそうなら、火口の縁を山頂方面に向かって15分ほど登れば(火口側に近づきすぎて転落しないように)、宝永第1火口に到達します。

江戸時代中期の宝永4年(1707年)に起きた富士山の最後の噴火となる宝永大噴火で、標高の高い順に第一火口、第二火口(第二火口の上部にあるのが宝永山の山頂です)、そして第三火口という3ヶ所の火口が縦に並んで誕生。
山麓や飛行機から見て目に入るのは最大の第一火口なので、できれば第一火口の縁に到達するのがおすすめです。

江戸でも大量の火山灰が降ったという宝永大噴火の「現場」がここですが、ここに来たことのある人は、富士山頂に立った経験のある人よりもうんと少ないのです。
宝永山の山頂へは1時間15分ほどですが天候の急変もあるので、登山経験の少ない人には、霧に巻かれると方向を見失しなあうため、あまりおすすめできません。

帰路はそのまま平坦な道を富士登山道新6合目を目指せば10分ほどで宝永山荘、雲海荘で、富士宮やきそばなど食事も可能です。
この宝永山荘、雲海荘のある場所がかつての5合目で、今歩いてきた道が富士山の5合目を一周していた「御中道」(おちゅうどう=現在は大沢崩れなどの崩壊で一周できません)。
富士山信仰の富士講では、富士山に3回以上登頂した者だけ、歩くことがが許された聖なる道で、それだけ、「富士山の真髄」を感じ取ることができる道ということになるのかもしれません。

富士登山道6合目から富士山スカイライン5合目(富士宮口5合目)へは15分ほどですが、足首や膝を痛めないため、のんびりと下山を。

富士山スカイライン5合目(富士宮口5合目)の宝永遊歩道入口がわかりにくい場合は、富士登山道を6合目まで、蟻の行列に参加し(6合目までは30分ほどの登りです)、そこから宝永火口を目指すプランもあります(逆コース)。
一般的には植物相の変化を楽しむ部分を往路にするのがおすすめです。

宝永遊歩道という名がついてはいますが、基本的には登山道なので、雨具や非常食、飲み物などの携行を。
登山靴、トレッキングシューズを履いて、チャレンジを。

宝永第一火口
巨大な宝永第一火口
宝永遊歩道
こんな雲海に遭遇することも
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掲載の内容は取材時のものです。最新の情報をご確認の上、おでかけ下さい。
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