北海道には面積が1haの湖沼が100以上あり、そのほとんどが凍結します。そのなかで結氷湖と不凍湖の間にあるのが、摩周湖。ほとんど凍らないという最北の不凍湖が支笏湖で、その少し南側の洞爺湖も不凍湖です。支笏湖と洞爺湖はなぜ凍らないのでしょう? 道央・道南にあるからではありません。
貯水量は琵琶湖に次ぐ日本で2位、3位の巨大な水瓶
支笏湖と洞爺湖は、ともに支笏洞爺国立公園。
雄大な自然は、4万年前の大噴火で誕生した凹部の支笏カルデラ、11万年前の巨大噴火で誕生した洞爺カルデラのカルデラ湖です。
サロマ湖など海水の入る汽水湖は凍ることはありませんが、北海道で不凍湖として知られるのは支笏湖と洞爺湖のみ。
支笏湖は、周囲40.4km、水深363m(田沢湖に次いで日本で2番目に深い湖)、平均水深も265.4mと深いのが特徴で、貯水量も20.9キロ立法と膨大です。
洞爺湖は周囲50km(カルデラ湖としては日本で3番目の大きさ)、水深180.0m、平均水深117.0mで貯水量は8.19キロ立法。
実は支笏湖の大きさは琵琶湖の9分の1程度ですが、貯水量は琵琶湖の4分の3で、日本で2位の巨大な水瓶。
洞爺湖も面積は日本で9番目ながら貯水量では3位、つまりはこの貯水量の多さが不凍湖を生み出しています。
湖面は夏場に温められ、厳冬期に冷却され、湖面と湖底で対流が生まれます。
夏は暖気で暖められた軽い水が湖面にあり、冷たく重い水が湖底に沈んでいますが、秋口に空気が冷えてくると湖面の水も冷却され対流で湖面に沈んでいきます。
こうして対流により湖水が混じり合って、全体が4度くらいで均一化しますが、厳冬期に湖面の水が0度にまで冷えても湖水の量が多いと対流で全体が冷えることがないため、面積が大きく、水深も深い容積の大きい湖は、結氷に至るまで長い時間を要することに。
こうして、結氷に至るまで湖水全体が冷えることなく春を迎えるので、支笏湖と洞爺湖は凍らないというメカニズムを生んでいます。
湖では湖面が氷に閉ざされたほうが、プランクトンなどの生物生産量が増加するという傾向があり、漁獲高などの生態系にも影響していると推測されます。
支笏湖は透明度で2002年には30.7mを記録するなど、水質と透明度でも有名ですが、不凍湖ゆえに水中の栄養分が少なく、プランクトンの発生が少ないことが透明度を保っているのです。
そのため、「摩周湖ブルー」と呼ばれる透明度大の摩周湖と同様に、「支笏湖ブルー」と呼ばれ、「ダイバーなら一度は潜りたい湖」としても知られています。
不凍湖のため、12月〜2月にプランクトンが減少し、4月末〜6月頃にはダイビングのベストシーズンが訪れます。
支笏湖のヒメマス(支笏湖チップ)は、明治27年に阿寒湖から移入されたものですが、動物性プランクトンのエサとなる植物性プランクトンが少なく、動物性プランクトンをエサとするワカサギが生息していないことから、生息数も限られ、貴重な味覚となっています。
臭みの原因となる水生昆虫を口にすることがないため、支笏湖チップは別格の味といわれるのです。
支笏湖と洞爺湖はなぜ凍らない!? | |
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