橋が回って漁船が通る! 黒部漁港の旋回式可動橋「生地中橋」

富山県黒部市生地の黒部漁港には、全国的にも珍しい旋回式可動橋が架かっています。これが生地中橋。河川や港で、橋が船の通航の妨げになる場合、橋桁(はしげた)を跳ね上げる跳ね上げ橋、橋桁全体を上にずらす昇開橋、そして橋桁を回転させる旋回橋などがありますが、旋回橋は非常に珍しい存在です。

黒部漁港の入口、かつての浜往来に架かる

生地中橋

上の空撮マップ(国土地理院の地図を編集)を見てもわかるように、入江状になった黒部漁港の入口に生地中橋が架かっていますが、漁船が港に出入りするときには、鉄道の踏切のように黄色と黒、阪神タイガースカラーの遮断機が下りて、車と人の通行を遮断。
通行人や車が橋の上にいないことが確認されたなら、橋がグルリと水平方向に半回転。

専門用語で、旋回橋(せんかいきょう/Swing bridge)というこの橋、国内では天橋立(あまのはしだて)にある廻旋橋(かいせんきょう)が有名ですが、富山県黒部市にある生地中橋は、まさに「知る人ぞ知る旋回橋」というわけです。

橋長38.4mは、世界一の旋回橋であるエル・フェルダン鉄道橋(有名なスエズ運河に架かっています/エジプト)の全長380mには遠く及びませんが、あちらはクイーン・エリザベスなどの豪華客船も通過。
こちらは漁船、遊漁船が大漁旗をなびかせて通過しています。

「現在、黒部港には60隻ほどの漁船がいますが、橋の下を通過できない大型の船が10隻ほど。1日に平均して7〜8回は橋が回転しています」
とは、くろべ漁業協同組合関係者の解説。
レオナルド・ダ・ヴィンチ(Leonardo da Vinci)はミラノにあるアンブロジアーナ図書館(Biblioteca Ambrosiana)に旋回橋(「可動橋の細部の素描」「浮輪と可動橋の構造」)のスケッチを残しています。
ひょっとするとこうした可動橋は、ダ・ヴィンチの発明なのかも知れません。

橋のかかる道は、歴史的には海岸沿いを走る浜往来。
橋の南側には生地蒲鉾もあり、街道の歴史を今に伝えています。
生地は北アルプスの伏流水が湧き出す場所でもあり、生地中橋から南に歩くと絹の清水、殿様清水、弘法の清水、神田の清水、中島の清水、前明寺の清水と清水が数多く、「神明町の共同洗い場」もあるので、散策にも絶好です。

遮断機が降りて通行がストップ
遮断機が降りて通行がストップ

船から電話で連絡すると、橋を開く作業開始!

橋の南側には管理操作室が設けられ、5人態勢で24時間橋を見守っています。
では、橋を開きたいときにはどうするのでしょう?

「該当の漁船が事前に管理操作室に電話します。すると、管理人が橋の両側20m手前の警告灯の赤ランプを点灯。これから橋が回転することを告知します。安全が確認できたところで遮断機を下ろし橋を回転させるスイッチをオン」(くろべ漁業協同組合関係者)。

帰りの船は、「どの船がいつ頃帰ってくるのかは経験からわかっている」とのことで、橋をクルリと回して船を迎えます。

黒部漁港のセリは、県内の他の漁港より早い早朝4:30。
大型漁船の活動は深夜から早朝にかけてということで、
「地元でも橋が回っているのを見たことがないという人も案外いるんです」
とのこと。

黒部漁港はすぐ沖から45度という急角度で海岸がドロップ。
つまり、漁港を造ることのできない地形のため河口を利用して内陸に掘り込んだ珍しいスタイルの漁港となっています。

ちなみに、救急車などの緊急車両は、橋が通れないことを想定し、この橋を通らずに、最初から遠回りでも迂回しているそうな。
百聞は一見にしかずなので、ぜひ富山県黒部市生地をお訪ねあれ。

黒部漁港には海底トンネルもあり、こちらも「知る人ぞ知る海底トンネル」となっているのです。

橋が回って漁船が通る! 黒部漁港の旋回式可動橋「生地中橋」
所在地富山県黒部市生地四十物町(あいものちょう)/四十物=北前船で運ばれた昆布などのこと
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