機関車が引っ張るのが列車、モーター(電気)で走るのが電車ですが、JR東日本(首都圏)、JR西日本(京阪神地区)が区分する「列車ダイヤ」、「電車ダイヤ」は意味合いが大きく異なります。しかもそれ以外の地域のJRを走る列車は、電車、気動車を問わず原則として「列車ダイヤ」で運用されています。
そもそもダイヤって何!?
3月になると「ダイヤ改正」などという言葉をよく耳にしますが、このダイヤとは「ダイヤグラム」(diagram)の略。
情報を整理し、わかりやすく表示したものが(幾何学的な図示)、「ダイヤグラム」。
鉄道では横軸に時刻、縦軸に駅を配置し、列車の動線を「スジ」と呼ばれる線で表すことで停車時間、追い越す列車などがひと目でわかるようになっています。
表示された線が、何らかの原因で乱れることがあるので、そこから「ダイヤが乱れる」という言葉も生まれています(正しくは「ダイヤグラムが乱れる」です)。
『JR時刻表』を出版する交通新聞社は、鉄道ファン向けに『鉄道ダイヤ情報』なる出版物を出していますが、中を開くと、各線のダイヤが並んでいます。
『JR時刻表』からは解析できない細かい情報、臨時列車や貨物列車の情報なども掲載され、鉄道ファンのバイブルになっています。
運転士や車掌は、「箱ダイヤ」と通称される「行程表」を使っていますが、運転士、車掌の横にあるので、先頭や最後尾に乗車すれば目にすることができることも。
興味があれば、ぜひ確認してみてください。

「列車ダイヤ」と「電車ダイヤ」の違い
さてさて、ダイヤが何たるかをまずはご理解いただいたところで、本題の「列車ダイヤ」と「電車ダイヤ」の違いの話へ。
首都圏、あるいは京阪神のJRに乗車する際に、乗車する電車が「列車ダイヤ」で運転されているのか、「電車ダイヤ」なのかは、ホームでの放送を聞けばすぐに判別できます。
たとえば、「今度まいります電車は」であれば確実に「電車ダイヤ」で、山手線、京浜東北線などではこの放送が流れています。
上野駅で、山手線、京浜東北線の横を走る上野東京ラインのホームでは、「今度まいります列車は」となるので、ホームの放送にはぜひ注目を。
表題の通り、湘南新宿ラインは「列車ダイヤ」、横須賀線は「電車ダイヤ」ですが、逗子駅でも横須賀線(電車)と湘南新宿ライン(列車)では「今度の電車は」、「列車がまいります」などとちゃんと呼び分けているのです。
呼び分けるからには大きな違いがあるわけで、「列車ダイヤ」は、全駅での発着時刻が設定され、しかもダイヤの最小単位は15秒。
つまり、上野駅15時15分45秒発車という具合。
この場合、時刻表上は切り捨ての5時15分発になっているので、時刻表上では45秒遅れたからといっても、オンタイムの可能性があるのです。
これに対して「電車ダイヤ」は、発着時刻の設定は一部の駅に限定され、途中駅の多くが「標準時刻」(発着の目安となる時間)となっています。
主要駅で時間調整を行なうのはそのためで、ダイヤの最小単位は10秒。
上野駅15時40分20秒などという具合に設定されています。

埼京線には列車と電車が走っている!
この違いは、もともと長距離、中距離列車は機関車が牽引する列車、それに対して首都圏、関西で近距離輸送で発達した電車で、異なるダイヤを組んだことが始まり。
東京などでは中長距離の列車も電車化されていますが、ダイヤ的には過去の区分を今も踏襲していることに。
「上野東京ライン」は列車ですが、列車線である東海道本線(品川駅〜東京駅)・東北本線(東京駅〜上野駅)を走る常磐線快速(電車)は、「列車線を走る電車」というレアなケースです。
グリーン車を備えた中央線快速が、高尾を越え大月まで乗り入れていますが、東京〜高尾は「電車」、高尾から先は「列車」の扱いです。
たとえば大月駅13:15 発、東京駅ゆきの「中央特快」は、大月駅〜高尾駅間は1324M、高尾駅〜東京駅間は1324Tと、高尾駅で列車番号が変わっています。
ここまでこだわる必要があるかと思えるほどですが、直通運転ながら、わざわざ列車番号を変える作業をしているのです。
特異なのが埼京線で、本来は、りんかい線直通を含めて「電車」ですが、相鉄線に直通が始まったため、相鉄線直通のみ新宿r気~羽沢横浜国大駅間が「列車」扱いに。
面白いのは大崎駅で埼京線の大宮方面を待っていると、「電車がまいります」、(相鉄線からだと)「列車がまいります」とわざわざ呼び分けていること(相鉄線直通は新宿以南、「列車ダイヤ」で運転)。
たかが「列車」、されど「列車」というJRの妙なこだわり、徹底した呼び分けを感じられるのです。
大崎駅、逗子駅などに行く機会があれば、ホームで耳を澄ましぜひ呼び分けのチェックを。

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