大原隧道

大原隧道

神奈川県横浜市南区にある車も歩行者・自転車専用の狭いトンネルが、大原隧道(おおはらずいどう)。昭和3年7月に完成した横浜水道の水道管敷設のための隧道(トンネル)で、全長254.5m、高さ3.62m、幅2.44m。横浜市認定歴史的建造物、土木学会選奨土木遺産に選定されています。

水道本管の管理用通路を歩行者通路に転用

横浜は、開港後の居留地のコレラ防止などから、駐日英国公使パークス(Sir Harry Smith Parkes)らが神奈川県令・沖守固(おきもりかた/明治14年神奈川県令に就任)に上水道整備を要望し、イギリス陸軍工兵少将のスペンサー・パーマー(Henry Spencer Palmer)が、日本最初の近代水道を敷設した地。
道志川が相模川に合流した神奈川県津久井郡三井村(相模原市緑区三井、現在の津久井湖)で、取水した水を48km先の野毛山浄水場(標高50.6m)に送り、ここから居留地などに上水を給水しています。
野毛山にあった野毛山浄水場は関東大震災で大破し、それに代わって完成したのが現存する旧野毛山配水池です(昭和5年完成)。

大原隧道は、野毛山の配水池同様に、関東大震災で被災した横浜の水道施設の復興事業として、市街地が拡大した横浜南部方面への送水のために築かれた水道本管用のトンネル。
西谷浄水場から蒔田・大岡・井土ヶ谷・弘明寺・堀の内・岡村・磯子の各方面に給水する水道管を敷設するため、馬蹄形トンネルを掘削したもので、トンネル内部には現在も水道管が埋設されています。
人が通れるトンネルになっているのは、本来は管理用通路として。
後に生活道路に転用されたもの。

馬蹄形トンネルの坑門(トンネルの入口)は高温で焼き過ぎになるくらい焼成した焼過レンガ(フランス積み)と白い花崗岩による独特のデザインで、横浜市水道局の設計。
フランス積みより、イギリス積みの方が耐震性にすぐれるので、明治後期以降は、おもにイギリス積みが主流となっていますが、耐震性を確保した上で、デザイン性を優先させたのか、大原隧道はフランス積みになっています。
独特な雰囲気から映画、テレビのロケ地にも。

北側には昭和5年完成の東隧道があり、同じ用途で建設され、デザインも似ているので兄弟トンネルとも呼ばれていますが、サイズが倍くらいあって、自動車も走行可能になっています。
横浜では山手隧道が土木遺産に認定されるほか、40以上の震災復興橋梁が現存し、桜道橋、打越橋、西の橋、谷戸橋が土木遺産に認定(「横浜の都市形成において重要な役割を担い、設計・意匠など最先端の土木技術が取り入れられ、歴史的構造物としても貴重な土木遺産」)。

大原隧道
名称 大原隧道/おおはらずいどう
所在地 神奈川県横浜市南区清水ヶ丘76-10~南太田2-222
電車・バスで 京浜急行南太田駅から徒歩15分
掲載の内容は取材時のものです。最新の情報をご確認の上、おでかけ下さい。

 

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