神奈川県横浜市鶴見区にあるJR鶴見線(鶴見駅〜扇町駅)の駅が、国道駅(こくどうえき)。昭和5年10月28日、鶴見臨港鉄道の駅として開業した駅で、京浜国道との交わる場所にあるのが名の由来です。コンクリート造りの高架駅で、アーチ部分などが印象的。映画のロケにも使われています。
コンクリート博士・阿部美樹志の残したレトロな高架駅
JR鶴見線は、浅野埋立(浅野財閥の埋立地)と呼ばれる鶴見地区埋立地への貨物輸送、人員輸送のため敷設された線路で、昭和18年7月1日、戦時買収により、国有化されています。
高架駅も往時のままで、開業時には高架下商店街「臨港デパート」が営業したと伝えられ、その部分はその後、飲食店などの商店街となりました(現在は閉店しています)。
かつては「やきとり国道下」などの飲食店もありましたが、今では廃業し、静かな駅は、ローマ建築のような雰囲気を醸し出しています。
セメントの浅野財閥関係の鉄道だったため、設計は、鉄道院(後の鉄道省)で東京~万世橋間の高架橋などにも関わり、鉄筋コンクリート工学の開祖とされる阿部美樹志(あべみきし)。
阿部美樹志設計では、佐賀県庁舎旧館、名島川橋梁(土木学会選奨土木遺産)などが現存しています(阪急百貨店や阪急梅田駅、阪急西宮球場なども手掛けましたが建て替えらています)。
黎明期の鉄道高架線の設計に大きな足跡を残しているのが阿部美樹志で、札幌農学校土木工学科を首席で卒業後、鉄道作業局に入局し、イリノイ大学でコンクリート工学の世界的な権威アーサー・タルボット(Arthur N. Talbot)に学び、帰国後、東京〜万世橋間高架橋の設計に携わっています。
阿部美樹志は、東京横浜電鉄の神奈川付近の高架橋(大正15年完成)、目黒蒲田電鉄大井町付近高架 橋(昭和2年)なども手がけていますが、阪急の小林 一三の仲介で浅野財閥・ 浅野総一郎に紹介され、昭和4年に浅野混凝土専修学校(現 ・学校法人浅野学園、浅野中学校・浅野高等学校)校長に就任、鶴見〜鶴見小野間の2.1kmの高架橋の設計を担ったのです。
とくに国道駅は橋梁にアーチ構造を採用、コンコースを挟んで高架下を商業空間にするという独特なデザインになっています。
支柱の裾にスクラッチタイルで巻くのも阿部スタイルのひとつです。
JR鶴見線の高架部分は、鶴見川橋梁を除いて、阿部美樹志のデザインが残される貴重な存在となっており、その独特な雰囲気が多くの映画やドラマに使われる理由です。
昭和24年公開の映画『野良犬』(監督・黒澤明、主演・三船敏郎、志村喬)、平成7年公開の映画『幻の光』(監督・是枝裕和、主演・江角マキコ)昭和62年放送のTBSテレビ『男女7人秋物語』(主演・明石家さんま、大竹しのぶ)、平成18年放送のテレビ朝日のドラマ『時効警察』(主演・オダギリジョー)、平成18年放送のTBSのテレビドラマ『白夜行』(主演・山田孝之、綾瀬はるか)などのロケ地になっています。
近年ではSNS映えするスポットとして、再注目される存在に。
国道駅 | |
名称 | 国道駅/こくどうえき |
所在地 | 神奈川県横浜市鶴見区生麦5丁目 |
関連HP | JR東日本公式ホームページ |
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