仁和寺・御室桜

仁和寺・御室桜

京都市右京区御室にある真言宗御室派の総本山、仁和寺(にんなじ)。世界文化遺産「古都京都の文化財」の構成資産にもなる名刹ですが、春は、中門内の西側一帯に咲く遅咲きの御室桜(おむろざくら)が咲くことで有名です。その歴史を背景に「日本さくら名所100選」にも選定されています。

江戸時代から有名な京随一の桜の名所

御室桜(おむろざくら)と通称されますが、品種は背丈が2mほどと低い「御室有明」(おむろありあけ=大島桜と山桜系統のサトザクラ、200本)、車返し、御衣黄(ぎょいこう)、鬱金(うこん)、普賢象など仁和寺に植栽されるサトザクラの総称。
とくに「御室有明」は、八重、半八重、一重の花が入り混じって咲いているのが特徴です。
例年なら4月上旬に開花し、4月中旬頃(4月12日~17日頃)に見頃を迎えます。

仁和寺は皇族・公家とゆかりの深い門跡寺院の先駆けで、昌泰2年(899年)に出家した宇多法皇(宇多天皇は東寺で受戒した後、仁和寺に入って法皇となりました)の住まいだったことから、「御室御所」(おむろごしょ)と呼ばれたことに由来します。
この宇多天皇の出家と仏門への傾倒は、後ろ盾だった天皇を失った菅原道真(すがわらのみちざね)が左大臣・藤原時平(ふじわらのときひら)の讒言(ざんげん=人を貶めるためのでっち上げ)により大宰府へ左遷される昌泰の変(しょうたいのへん)を生んでもいるのです。

御室桜は、江戸時代から庶民の桜として親しまれ、多くの和歌にも歌われています。
仁和寺は京を焼け野原にした応仁の乱で荒廃し、徳川幕府によって復興されていますが、その際に、植栽されたもの。

「あたしゃ おたふく御室の桜、はなは低ても 人は好く」。
背丈が低い御室桜の花と鼻を掛けた軽妙な都々逸(どどいつ)で、「花(鼻)が低い」ことから「お多福桜」とも呼ばれていたのです。

境内の茶店の床几(しょうぎ)に腰掛け、お茶を頂きながら、ちょうど目線の高さで鑑賞できるのも風流。

貝原益軒が書いた『京城勝覧』(けいじょうしょうらん=日本で初めて観光モデルルートが掲載された旅行ガイドブック)にも「春は此境内の奥に八重桜おほし。洛中洛外第一とす。吉野の山桜に対すべし。毎年二三月の初ごろ、十余日の間、花見の人多くして、日々群衆せり。酒食を携へ幕をはりて、遊宴をなす者多し」と記し、吉野の桜(ソメイヨシノが開発される以前、江戸時代の桜は山桜を愛でるのが一般的で、吉野山が日本一の桜の名所でした)と並ぶ京都随一の桜の名所だったことがわかります。

大正13年12月9日に、桜川(茨城県)、小金井(東京都)と並んで国の名勝に指定(桜の名所としては初の指定)。
京都で「日本さくら名所100選」に選定されるのは、嵐山、醍醐寺と御室桜の3ヶ所です。

ちなみに仁和寺は江戸時代に、東叡山輪王寺(寛永寺)、日光山輪王寺などとともに宮門跡(親王門跡)としてその筆頭の格式を誇りましたが、神仏分離、廃仏毀釈などとともに明治4年に宮門跡還俗が決まり、仁和寺第30世の門跡の純仁親王は、仁和寺宮嘉彰親王(にんなじのみやよしあきしんのう、後の小松宮彰仁親王)となって陸軍大将、参謀総長などを歴任しています(日清戦争では征清大総督に任じられ旅順に出征)。

仁和寺・御室桜
貝原益軒『京城勝覧』の仁和寺紹介のページ。観音堂の横に御室桜が
仁和寺・御室桜
名称 仁和寺・御室桜/にんなじ・おむろざくら
所在地 京都府京都市右京区御室大内33
関連HP 仁和寺公式ホームページ
電車・バスで JR京都駅から市バスで45分、御室仁和寺下車、徒歩1分で仁王門。または京福北野線御室駅から徒歩3分で仁王門
ドライブで 名神高速道路京都南ICから約11km
駐車場 仁和寺駐車場(200台/有料)
問い合わせ 仁和寺 TEL:075-461-1155/FAX:075-464-4070
掲載の内容は取材時のものです。最新の情報をご確認の上、おでかけ下さい。

仁和寺

京都市右京区御室にある真言宗御室派の総本山が仁和寺(にんなじ)。886年(仁和2)年、光孝天皇の勅願で創建した古刹。宇多天皇が寺内に御室(御座所)を設け、明治維新まで皇族関係の法親王が門跡となったため御室御所と呼ばれた門跡寺院です。世界遺産

仁和寺・金堂

仁和寺・金堂

仁和寺の本尊である阿弥陀三尊を安置する堂が金堂。慶長年間造営の御所・内裏紫宸殿(ししんでん)を寛永年間(1624年〜1643年)に移築されたもので国宝。徳川家の御大工(おんだいく)といわれた江戸幕府大工棟梁・中井正清(なかいまさきよ)の普請

仁和寺・二王門

京都市右京区御室にある真言宗御室派の総本山、仁和寺(にんなじ)。皇室とゆかりの深い門跡寺院で、世界文化遺産「古都京都の文化財」の構成資産にもなる名刹ですが、寛永18年(1641年)〜正保2年(1645年)頃の築という二王門は、国の重要文化財

仁和寺・五重塔

仁和寺・五重塔

京都府京都市右京区御室にある真言宗御室派の総本山が仁和寺(にんなじ)。世界遺産「古都京都の文化財」の構成資産にもなり、御室桜でも有名ですが、国の重要文化財に指定される五重塔も、時代劇などに登場して、全国的に有名で、「日本一目にする五重塔」と

 

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