宮城県石巻市雄勝町、雄勝港周辺の巨大な防潮堤に壁画作品を展示する野外美術館が、海岸線の美術館。東日本大震災後、海岸沿いに築かれた高さ最大10m、全長3.5kmの巨大な防潮堤に壁画を描くアートプロジェクトで、最初の作品は安井鷹之介の『THEORIA|テオリア』、『A Fisherman|漁師』の2作品。
長大な防潮堤が、年々にアートへと変身中!
雄勝町は、三陸のリアス式海岸沿いにある美しい漁村ですが(雄勝町の名産は、ホタテ、カキ、ウニ、アワビ、ホヤ、ワカメ、旬の魚などリアス式海岸で育まれる豊かな海産物)、東日本大震災の震源から最も近かった町でもあるため、20m級の津波の被害に遭い、町の8割が壊滅。
当時4000人いた町の人口も1000人へと減少し、しかも高齢化が進んでいます(超高齢化地域のひとつに)。
津波の反省で生まれた巨大な防潮堤は、津波から町を守る役目がありますが、同時に美しい海景を遮る灰色の壁にもなっていました。
雄勝町でアート事業を行なう一般社団法人SEAWALL CLUBを中心に、防潮堤をアート作品にすることで、海沿いに新しい風景を生みだし、海と人を、過去と未来をつなぐ場所に変えていくことを目指したプロジェクトです。
「雄勝の自然と一体化し、季節や時間によって変わる鑑賞体験」、そして「毎年制作され、壁画から壁画まで海岸線沿いを巡ることで雄勝の魅力を隅々まで味わえる地域一体型の設計」が魅力です。
美術館の館長は、東京藝術大学建築科卒業、電通に勤務という髙橋窓太郎。
アートパブリックスペースの企画・運営に長けた人が館長ということに。
最初の2作品の制作費用は、クラウドファンディングを利用。
今後も、クラウドファンディングなどを利用しながら、1年に1〜2作品の壁画を制作し、美術館の範囲を拡大していく予定となっています。
夢のある壮大なプロジェクトです、興味があればクラウドファンディングにもぜひ参加を。
安井鷹之介『THEORIA|テオリア』
・サイズ:高さ7.5m×幅54.6m
・場所:宮城県石巻市雄勝町上雄勝2-22 みうら海産物店裏防潮堤
・制作期間:令和4年9月〜11月
【アーティスト安井鷹之介のコメント】
雄勝の浜の風景をミックスしたワイドな一枚の絵の中には、左から、タ→昼→朝→夜と時間軸も混在させています。
この壁画はこれから毎日、晴れの日も雨の日も、移り変わる四季や、対岸の山や一秒ごとに表情を変える空、走る車や生活する人と共に風景を作っていくでしょう。
そして人がここにいる限り、ここでその光景を眺めて「観て想う」ことは続いていくはずで、本作はそこにある存在と状況のすべてとともに成立する作品です。
作品名の『テオリア』は「観想」という意味のギリシア語で、スペルを分解すると THE/O(Ogatsu) / RIA(rias)[雑勝の岸辺]と読むこともできます。
この壁画を含む雄勝の雄大な風景を前に、視野の先にある没入と想像の時間を過ごしていただけることを願っています。
安井鷹之介『A Fisherman|漁師』
・サイズ:高さ7.5m×幅6.6m
・場所:宮城県石巻市雄勝町上雄勝2-22 みうら海産物店裏防潮堤
・制作期間:令和4年11月
【アーティスト安井鷹之介のコメント】
この作品は、船頭にてロープを括る漁師さんの背中のワンシーンを描かせてもらっています。
彼らの太くゴツゴツとした手から繰り出されるロープワークの所作も一才の無駄がなく、本当に美しいです。
シーズン中は休みなく毎日毎朝海に出て仕事をする、この瞬間からだけでもその膨大な時間の片鱗を想像することができました。
この町の至るところから感じ取ることのできる超越的なスケールとポテンシャルに、一瞬で猛烈な憧れを抱かされて、遺伝子や細胞が疼いたのは、脈々と自分の身体にも受け継がれるエッセンスを太古にまで感覚をつなげてくれる雄勝の凄みなのだと僕は感じています。
安井鷹之介
愛知県出身。東京藝術大学彫刻科卒業。MAHO KUBOTA GALLERY所属。
大学在籍時、ミケランジェロやロダンなど古典から近代までの彫刻を学び、一方で主に欧米の現代アートの潮流に触れています。
石膏と布で造形した彫刻で注目を集め、このオリジナルな手法を用い独特のボリューム感を持つペインティングも制作。
日本人離れしたセンスと現代的で開かれた表現が幅広い層の共感を呼ぶアーティストです。
海岸線の美術館 | |
名称 | 海岸線の美術館/かいがんせんのびじゅつかん |
所在地 | 宮城県石巻市雄勝町雄勝上雄勝2-22 |
関連HP | 海岸線の美術館 |
ドライブで | 三陸自動車道河北ICから約20km |
駐車場 | 20台/無料 |
掲載の内容は取材時のものです。最新の情報をご確認の上、おでかけ下さい。 |
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