JRはもちろん、3セクの鉄道会社も導入を進める「電気式気動車」をご存知だろうか。国内で気動車(ディーゼルカー)の生産はほとんどありませんが、現在、注目されているのがエンジン以外のシステムが電車化された「電気式気動車」。電池式への過渡期の車両ともいえますが、はたして、電車なのか、気動車なのか。
非電化区間の救世主として登場

能登半島地震からの復興を図る3セクの「のと鉄道」でも、鉄道事業再構築実施計画に新型の「電気式気動車」導入を盛り込むなど、今後、各地で活躍すると推測できるのが「電気式気動車」。
非電化線区は、これまで気動車(ディーゼルカー)が一般的でしたが、これは軽油、バイオディーゼル燃料を噴射して動力源とする「液体式気動車」のこと。
現在、開発が進んだり、実際に走っている新型車両が、「ディーゼル・蓄電池ハイブリッド車」、「蓄電池電車」、「電気式気動車」で、将来的にはこれに水素を燃料とする「燃料電池車両」が加わりそうです。
充電したバッテリーを積んだ「蓄電池電車」ならエンジンも不要ですが、蓄電池が高価で容量が限られる(ハイブリッド車両でさえ1.5倍ほどの価格)、さらには交換が必要など、コストがかかる難点があります。
現状では、非電化区間の距離が短く、電化区間との直通運転という条件下で運用されています。
結果としてランニングコストの差はあまりないので、車両コストが高い分だけ、負担がかかることになり、JR以外での導入はありません。
そうしたネックを解消し、赤字を抱える3セクなどでも導入しやすいのが電気式気動車。
JR東日本が電気式気動車とするのは、GV-E400系気動車。
老朽化したキハ40系気動車の置き換えを目的に新造された車両で、ディーゼルエンジンで発電した電力で主電動機を駆動する形式。
つまりは軽油を原料に、「ディーゼルエンジンを発電機に使う電車」ともいえる存在です。
JR西日本で人気のクルーズトレイン「TWILIGHT EXPRESS 瑞風 MIZUKAZE」の車両は、JR西日本87系気動車。
気動車とはいうものの、ディーゼル発電機にて発電した電力と、蓄電池の電力とを組み合わせてモーターを回すもので、ハイブリットに進化した「電気式気動車」の仲間(ただし、電化区間では架線集電により走行できます)。

ハイブリット型の「電気式気動車」も登場

通常の「電気式気動車」は、蓄電池を搭載していないため、加速時にはエンジンの起動が必要となります。
そのため、実際に乗車すると、加速時にはエンジンと電車音の両方を耳にするのが特徴。
ハイブリット形式は蓄電池を搭載し、加速時にもエンジンの起動はありません。
JR九州のYC1系気動車は、ディーゼルエンジンで発電機を駆動させ、モーターを回すのでまさに「電気式気動車」。
「蓄電池搭載型ディーゼルエレクトリック」なので、こちらもハイブリット型の「電気式気動車」ということに。
ディーゼルエンジンを搭載してはいるものの、あくまで発電に使うだけなので、電車ともいえると思いますが、「ルーツが気動車」なので、JR的には「電気式気動車」となっています。
実は気動車と電車では運転士の免許は異なります。
では、「電気式気動車」は、気動車免許を有した運転士が運転するのでしょうか。
「電気式気動車」の運転には、本来であれば電気と内燃機関、両方の知識が求められるはずですが、正解は、どちらも運転士でも運転が可能。
文化財のような蒸気機関車とは異なり、モニターが故障個所を教えてくれるので、さほどの専門性は要しないことで、鉄道会社が必要な知識を十分に教育することを条件に、気動車免許、電車免許のどちらでも運転をOKとしているのです。
国鉄時代に導入されたキハ40、キハ47などの置き換え車両として活躍が期待されるのが、この「電気式気動車」。
結論をいえば、「電車でも気動車でもない」あるいは「電車でもあり、気動車でもある」存在という感じ、どちらかに分類するのは困難な車両といえるでしょう。
英語でMultiple-Unit(Diesel-electric Multiple-Unit)というように、複合的な車両というのが正解かもしれません。

非電化ローカル線で活躍の「電気式気動車」は、電車、気動車、どっち!? | |
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