日本遺産「古代日本の『西の都』」が、初の認定取消しに!

文化庁は、2025年2月、太宰府天満宮(福岡県太宰府市)などの文化財で構成する日本遺産「古代日本の『西の都』」の認定を取り消しました。文化庁は「日本遺産の認定の取消しは、取組実績や計画の内容が不十分であることによるもの」としています。

実は国内に100件以上もある日本遺産

大宰府政庁跡
大宰府政庁跡

文化庁によれば、地元の自治体や関連施設がしっかりとした取り組みと対策を行なわなかったことが取り消しの最大の理由とし、さらに「認定の取消しが、当該案件のストーリーや構成文化財自体の歴史的・文化的価値の滅失・棄損をただちに意味するわけではない」としながらも、取消しを受けた地域については、文化庁が実施する関連予算事業への申請ができないとしています。

取り消しは2015年に日本遺産の制度創設以来初となるもので、観光面への影響が懸念されていますが、実際に太宰府市などでは、「取り消しのニュースを聞いて初めて日本遺産に登録されていることを知った」という人がいる程度の認知度だったこともあり、「日本遺産であろうがなかろうが、歴史や文化に誇りを持っており、これまで通りしっかりとアピールする」(楠田大蔵太宰府市市長)と強気の姿勢です。

実際に、日本各地の日本遺産も、世界遺産に比べると認知度も低く、観光的な魅力にも乏しい面があります。
ただし、日本遺産に認定されることで、地元の歴史遺産に対する認知度が高まり、観光的な整備や、ルートなどが確保できるというメリットもあり、うまく活用している自治体も。

今回取り消しが決まった日本遺産「古代日本の『西の都』」は、東アジアの交流拠点となった1300年前に誕生したという古代都市(西の都)がテーマで、30点の文化財で構成(太宰府天満宮などが位置する太宰府市が構成文化財の3分の2を占有)。

認定取り消しに関しては、42点満点で評価する点数制で、「来場者が日本遺産のストーリーをどこまで認識・体感しているか不明瞭」、「他の資産に誘導できていない」、「住民からの認知度が低い」などとの指摘で、合計点は31点。

再度、申請するかどうかに関しても、関連の市町村でも温度差があり、メインとなる太宰府市は、整備と連携に対する予算に対してメリットの少なさ(地域活性への貢献度があまりない)から、申請には後ろ向きです。

太宰府市の日本遺産取り消しは、そもそも日本遺産とは何なのか、国内にあふれるほどある(すでに100件以上が認定されています)日本遺産へ、その存在意義を問いかけているのかもしれません。

大野城跡の増長天礎石群
大野城跡の増長天礎石群(糟屋郡宇美町)
日本遺産「古代日本の『西の都』」が、初の認定取消しに!
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