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青の洞門

青の洞門

大分県中津市、本耶馬溪(ほんやばけい)の代表的な景勝地、競秀峰。山国川に面した岩峰が1kmに渡って屏風を開いたように連なり、奇岩、秀峰の雄大な輪郭に、渋味のある岩肌が加わる最大の見どころ。その裾に江戸時代に手掘りされたのが「青の洞門」(あおのどうもん)。掘削当時は「樋田の刳抜」(ひだのくりぬき)と称していました。

30年の歳月を費やして掘られた江戸時代の手掘り隧道

越後高田(現・上越市)出身の僧・禅海(ぜんかい)が、享保15年(1730年)から30年以上もの歳月をかけて、ノミと槌だけでくりぬいたという洞門です。
高さ2丈、径3丈、長さ308歩。
青の洞門と名がついたのは、洞門南側の集落名が「青」だったから。
つまり、「樋田の刳抜」だったのが、青地区の洞門から、青の洞門に。

禅海(ぜんかい)は、越後国高田藩士の子で、本名は福原市九郎。
両親を亡くしたことで世の無常を痛感し、諸国遍歴の旅に出立、正徳5年(1715年)に得度して僧となり、諸国を回ります。
豊後国(現・大分県)の羅漢寺を訪れた際、川沿いの断崖の桟道(さんどう)が、人馬が落ちるなどの難儀をしているのを知り、隧道掘削を思い立ちます。
荒瀬井堰(あらせいぜき)が築かれたことで、川の水位が上がり、鉄の鎖を命綱にして桟道を歩いていたのです。

享保15年(1730年)頃に中津藩主の許可を得て掘削を開始し、宝暦13年(1763年)に完成。

禅海和尚の像

菊池寛『恩讐の彼方に』で知名度は全国区に

拡幅された現在では車道脇に歩道が設定されています
歩道の一部には当初の手掘りの隧道が残されています

明治時代後半から大正時代には、「天下第一の名勝」と称されるようになりました。
大正6年6月25日、与謝野晶子は耶馬溪を訪れ、「馬車はやく舞鶴橋の下くぐり青き世界に歩み入りにき」と詠んでいます。
大正8年、隧道掘削の経緯を文豪・菊池寛が『恩讐の彼方に』(おんしゅうのかなたに)で小説化し、全国的に知られる名所となりました。
『恩讐の彼方に』では主人公は木曽路・鳥居峠で茶屋を営みながら強盗を働くという設定。
己の罪業を感じて出家し、罪滅ぼしのために青の洞門を掘削という話ですが、あくまでフィクション。

山国川の対岸から見れば、自然と人工の資源がみごとに調和し、一幅の画となる。
削道の全長は342mで、うち隧道(トンネル)部分は144m。
今でも現役で使われていますが、幅員が狭いため信号を使った片側交互通行が実施されています。

寛延3年(1750年)、第1期の工事完成後には「人は4文、牛馬は8文」の通行料を徴収してその後の工事費用に充当したと伝えられ、日本初の有料道路ともいわれています。

明治39年〜40年、陸軍日出生台演習場への輸送路整備の大改修で、車両が通過できるよう拡幅。
原型がほとんど失われていますが、一部に明かり採りの窓とノミ跡が残されています。
ただし、禅海和尚が掘った洞門部分は、徒歩でのみ見学が可能。

近年、青をモチーフにした町おこしというわけで、青の洞門対岸にネモフィラ畑をつくり、ゴールデンウィークの誘客に務めています。

広重『六十余州名所図会』に見る 青の洞門

歌川広重『六十余州名所図会 豊前 羅漢寺下道』

歌川広重が57歳から60歳、1854年(安政元年)から1856年(安政3年)にかけて制作した大判錦絵が『六十余州名所図会』。
全国諸藩から選りすぐりの絶景を選んで描いたというシリーズです。
豊前国では、羅漢寺下道、つまりは青の洞門を描いています。

青の洞門
名称 青の洞門/あおのどうもん
所在地 大分県中津市本耶馬渓町曽木
関連HP 中津市公式ホームページ
電車・バスで JR中津駅から大分交通バス日田方面行きで30分、青の洞門下車すぐ
ドライブで 大分自動車道玖珠ICから約30.7km。または、宇佐別府道路宇佐ICから約23.4km
駐車場 青の洞門公共駐車場・耶馬溪橋公共駐車場を利用
問い合わせ 中津市本耶馬渓支所地域振興課 TEL:0979-52-2211
掲載の内容は取材時のものです、最新の情報をご確認の上、おでかけ下さい。

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