初詣の隆盛も鉄道開通が要因! 関東にある参詣鉄道 8選

参詣鉄道

関東の私鉄は、明治中期以降、有名寺社への参詣者を輸送する参詣鉄道として誕生した歴史を有する線が数あります。実は東京国際空港(羽田空港)への京浜急行も人々の願いを運んだ参詣鉄道が前身。東武鉄道が浅草と日光を結んだのも参詣鉄道の一環と考えることができます。

初詣が盛んになったのも鉄道網の発達が背景に!

京急大師線・川崎大師駅
京急大師線・川崎大師駅

大正8年には現在のJRグループにあたる鉄道院がガイドブック『神まうで』を発行。
全国鉄道路線ごとに有名神社や神宮を紹介解説したガイドブックで、鉄道省になってからも改訂を続けて出版されています。
大正11年には寺に限定した『お寺まゐり』も鉄道院から出版されているので、当時の旅行といえば鉄道を使った寺社参詣だったことがよくわかります。

江戸時代に巻き起こった伊勢参宮の『おかげ参り』は、数百万人規模のものが、およそ60年周期(「おかげ年」と言う)に3回ありますが、当時、江戸から伊勢へは途中に七里の渡しなどの海路を使っても片道15日間、往復だと1ヶ月という長旅でした。
現在の旅行代理店にあたる講中組織、伊勢講が組織されましたが、同様に富士山信仰の富士講、木曽御岳山への御嶽講、出羽三山への出羽三山講(三山講)などもあり、参詣という形での旅を実現していたのです。
信州・善光寺への善光寺参りもそうした寺社参詣ブームの一環で、多くの人が北国街道で長野を目指しました。

関東の大手鉄道は、明治中期以降にも数多かった寺社参詣客の輸送を担って生まれた線が多いのが特徴です。
東武鉄道の起点駅が浅草駅(昭和6年5月25日、浅草雷門駅開業)なのも、浅草寺の門前町だから。

実は初詣が盛んになったのも鉄道網の発達が背景にあり、その一助となったのが参詣鉄道です。
初詣が季語となったのは明治41年のことで、参詣鉄道の開業と大いに関係があることがよくわかります。

東武大師線・大師前駅
東武大師線・大師前駅

関東にある参詣鉄道 7選

京急大師線|川崎大師

鉄道会社:京浜急行電鉄
区間:京急川崎駅〜小島新田駅
開業:明治32年1月21日
内容:「京急の創業路線」で、川崎大師(平間寺)の参詣アクセスとして開業
日本で初めて標準軌を採用した鉄道路線にもなっています
京急川崎駅への乗り入れが開業3年後になったのは人力車組合の反対で

京浜急行発祥の地

京浜急行発祥の地

京浜急行電鉄は、明治31年2月25日に設立した大師電気鉄道株式会社が前身。明治32年1月21日、大師電気鉄道は、川崎駅(後の六郷橋駅)〜大師駅(現・川崎大師駅)間 (2.0km) を開業。これが現在の京急大師線です。川崎大師駅には「京浜急行

京急空港線|穴守稲荷神社

鉄道会社:京浜急行電鉄
区間:蒲田駅(現・京急蒲田駅)〜穴守駅
開業:明治35年6月28日
内容:穴守稲荷神社は開業当時、現在の羽田空港の位置にあり、川崎大師との2社参拝が多かったため、参詣鉄道を敷設(六左衛門の渡しで多摩川を渡り大師線に結び回遊するという構想)

東武大師線|西新井大師

鉄道会社:東武鉄道
区間:西新井駅〜大師前駅
開業:昭和6年12月20日
内容:伊勢崎線・西新井駅と東上本線・上板橋駅間をむすぶ路線として計画されましたが、用地買収の済んだ区間を、西新井大師(総持寺)参詣者の輸送を目的に開業
全線が単線

大師前駅

 終着駅なのに「券売機、改札のない巨大無人駅」が東京23区に!

東武大師線をご存知だろうか!? 東武伊勢崎線(東武スカイツリーライン)の西新井駅から分岐し、大師前駅を結ぶ1.0kmという短い距離の盲腸線。単線で、終着駅の大師前駅(だいしまええき/東京都足立区)は、自動改札機、自動券売機、自動精算機はおろ

東武日光線|日光2社1寺

鉄道会社:東武鉄道
区間:杉戸駅(現・東武動物公園駅)〜東武日光駅
開業:昭和4年10月1日
内容:杉戸駅と東武日光駅を結ぶ東武日光線、浅草駅を結ぶ伊勢崎線が現在では直通運転されていますが、開業時は杉戸駅で区分されていました
東武日光駅では路面電車(日光軌道線)に接続、さらに明智平に至るケーブルカー(日光鋼索鉄道線)と、中禅寺・中禅寺湖方面を目指していました

京成金町線|柴又帝釈天

鉄道会社:京成電鉄
区間:金町〜柴又
開業:大正2年10月21日
内容:明治30年、日本鉄道(国鉄の前身)により金町駅が開業、柴又帝釈天への参詣客を輸送する帝釈人車鉄道(人力で客車を押す鉄道)が明治32年に敷設されたのが前身
明治45年に免許を京成電気軌道へ譲渡

柴又駅

柴又駅

東京都葛飾区柴又4丁目にある京成電鉄金町線の駅が、柴又駅(しばまたえき)。明治32年12月17日、帝釈人車鉄道(たいしゃくじんじゃてつどう、現・京成金町線)の駅として開業した歴史ある駅で、レトロな下町風情を残した柴又帝釈天の玄関駅。「関東の

京成本線|成田山新勝寺

鉄道会社:京成電鉄
区間:京成上野駅〜京成成田駅(現在は成田空港駅まで延伸)
開業:昭和5年4月25日(現在の京成成田駅まで延伸開業)
内容:京成電鉄草創期から、成田は目的地となっていましたが、成田山新勝寺への参詣客輸送を考えてのことです


東急池上線|池上本門寺

鉄道会社:東急電鉄(開業時は池上電気鉄道)
区間:蒲田駅〜池上駅
開業:大正11年10月6日
内容:池上本門寺参詣客の輸送を目的に、池上電気鉄道の手によって開業

江ノ島電鉄線|江島神社(江の島)

鉄道会社:江ノ島電鉄(開業時は江之島電気鉄道)
区間:藤沢駅~片瀬駅(現・江ノ島駅)
開業:明治35年9月1日
内容:江戸時代には江の島詣で賑わい、明治以降も大山参りの精進落しの場として定着していた江の島と、藤沢を結ぶ鉄道を人力車組合などの反対を押し切って敷設
軌道敷設工事に並行して発電所の建設にも着手しています

初詣の隆盛も鉄道開通が要因! 関東にある参詣鉄道 8選
掲載の内容は取材時のものです。最新の情報をご確認の上、おでかけ下さい。

 

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