北海道茅部郡鹿部町にある民間飛行場が、鹿部飛行場(しかべひこうじょう)。地元以外ではまったく知られていませんが、実はトヨタ自動車が所有する飛行場で、1992年9月に開場。軽航空機、ヘリコプター、グライダーなどが利用しています。実はこの飛行場、豊田喜一郎の夢の具現化の一端ともいえる存在であることは、知られていません。
創業者・豊田喜一郎の夢が北の大地に息づく

トヨタ自動車は戦時下の昭和18年、国の要請を受けて愛知県の刈谷にトヨタ自工航空機工場を建設、航空機の開発製造に乗り出していますが、戦後は、航空産業には参入していません。
令和6年から、空のモビリティの実現に向け、電動垂直離着陸機(eVTOL)を開発するJoby Aviationを支援するなどしていますが、自前の開発は行なっていません。
なぜ、飛行場を有しているのでしょうか?
もともとは鹿部町の誘致を受けたトヨタ自動車が、日本航空と手を組み、平成4年9月に鹿部飛行場を開場。
当初はパイロット養成用の飛行場として機能していました。
当時の広報『鹿部』を見ると、「航空機産業への本格的な参入を目指すトヨタ自動車」と記されており、実は、電動垂直離着陸機(eVTOL)への投資につながる「航空機事業」への参入は、すでにこの頃から始まっていたことがわかります。
背景には、創業時からの夢である空のモビリティの実用化があります。
トヨタは令和元年、空飛ぶクルマを開発するアメリカのベンチャー企業、Joby Aviationと協業を開始していますが、すでにトヨタの燃料電池を搭載する試作機は500マイル(800km)もの飛行に成功しています。
トヨタ自動車の創業者である豊田喜一郎(豊田章男会長の祖父)は、自動車産業だけでなく、もともに航空機にも強い関心があり、昭和11年にはフランスの超小型航空機を購入し、回転翼の揚力に注目、航空機工場を立ち上げた昭和18年にはすでに2人乗りのヘリコプター試作機が完成しているのです。
昭和63年、日本フライングサービスに資本参加して小型機の販売にも乗り出していますが、その流れの中で開場したのが鹿部飛行場です。
つまりは、トヨタの源流には自動車とともに航空機への挑戦があったということになり、豊田喜一郎の夢は、鹿部飛行場にも脈々と息づいていることに。

【知られざるニッポン】vol.81 北海道に「トヨタの飛行場」が! | |
所在地 | 北海道茅部郡鹿部町本別450-1 |
場所 | 鹿部飛行場 |
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