旭川駅と日本最北の駅である稚内駅(わっかないえき)を結ぶ、宗谷本線。幌延駅を出ると、サロベツ原野の東端を走るようになりますが、最初の駅が下沼駅(しもぬまえき)。カニ族が鉄道移動する時代には、近くにサロベツ原野一望の名山台、原野最大の沼。パンケ沼があるため、乗降客も多少ありましたが、今ではほぼ0人という状況です。
下沼という駅名は、サロベツ湿原のパンケ沼に由来!

下沼という駅名は、サロベツ湿原の南部、下サロベツ湿原にある池の名前から。
正式にはパンケ沼、ペンケ沼ですが、パンケ (panke)は下流の、下の、手前の、の意で、ペンケ(penke)と対になる言葉。
つまり、サロベツ湿原にあるパンケ沼は「下の沼」、そこから下沼という和訳した地名が生まれたもの。
北海道の地名の大部分は、アイヌ語由来で、稚内がアイヌ語の「ヤムワッカナイ 」(yam-wakka-nay=冷たい水の沢)を日本語に置き換えたように、和人入植後に漢字、もしくはカタカナへ置き換えがた地名が多いのですが、下沼は意訳した地名ということになります。
パンケが漢字に直せなかったという単純な理由かもしれませんが札幌のポロは幌を当てているので、何か別の理由があったのかもしれません。
下サロベツ原野の東端に位置する下沼駅の西、2.1kmほどの場所にはパンケ沼(下の沼)があり、その玄関駅にもなっています。
なにもない駅前の道をひたすら真っ直ぐに歩けば、パンケ沼の畔、パンケ沼園地に到達できますが、徒歩30分は必要です。
かつては幌延ビジターセンターからパンケ沼園地まで、全長3kmの自然探勝路「下サロベツ木道」が通じていましたが、木道の傷みが激しく、利用者も少ないことから2020年に廃止されています。
サロベツ最大のパンケ沼ですが、下沼駅前からの直進道での到達しか、アプローチ手段はありませんが、実際には車で訪れる人が大半で、下沼駅の乗降者数ほぼほぼ0に反映されています。
駅舎は貨車を再生した北海道らしいユニークなもの

下沼駅は北海道にまだまだ開拓機運が残される大正15年9月25日に開業した歴史ある駅で、昭和59年までは貨物の取扱のある有人駅でした。
昭和60年に無人化とともに駅舎は廃車となった貨車を利用した、北海道らしい貨車駅舎に。
平成28年には、JR北海道が地元・幌延町に対し、下沼駅、南幌延駅、糠南駅の廃止を伝えましたが、幌延町が維持管理することで存続。
さらに令和3年度からはふるさと納税を原資とした町による維持管理に移行しています。
幌延町としては、下沼駅の存続理由を「サロベツ湿原等観光資源の玄関口として活用度が高いこと」をあげています。
それでも令和5年の1日平均乗降客数は0.2人。
しかも停車する列車は普通列車が1日上り・下りとも3本しかなく、稚内行き11:04着で降り立つと、下りの稚内行きは18:47発までなく、上りの名寄行きは19:09発までないので、降りたら夕方まで滞在を余儀なくされてしまうのです。
それでも幌延町が存続にこだわるのは、北海道らしい貨車駅舎、サロベツ原野の秘境駅を目的に、車で訪れる人も数多いため。
駅の利用者こそ少なくても、駅を目的に訪れる人は多いのです。
抜海駅は廃止されてしまいましたが、下沼駅はまだまだ健在。
一度、宗谷本線の鈍行で、そしてレンタカーで、下沼駅を訪れてみてください。

乗降者数ほぼ0人、サロベツ原野の秘境駅・下沼駅、その存続理由とは!? | |
名称 | 下沼駅/しもぬまえき |
所在地 | 北海道天塩郡幌延町下沼 |
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