「静岡県は何地方と?」と静岡県民に尋ねると、多くの回答は「東海地方」ですが、中部地方、いやいや関東ですと答える人もいて、はたして正解は? 東西に長い静岡県は、伊豆、駿河、遠州と旧国も3つにわかれ、そのうち伊豆、とくに東伊豆は関東といっても違和感がないような気がしますが・・・。
地元では東海地方、中部地方説が有力ですが・・・
まずは地元で回答の多かった東海地方から。
東海地方の呼び名は、五畿七道(ごきしちどう)の東海道に由来しますが、律令制の始まった奈良時代、畿内からの7つのルート上にあるエリアで、現在の茨城、千葉、埼玉、東京、神奈川、山梨、静岡、愛知、三重にあたります。
「青春18きっぷ」で関東から西日本に向かう際、東海道本線の各停に乗ると、快速列車のない静岡県内の長い旅となりますが、まさに「東海道」を実感する場にもなっているので、「東海地方」という回答にもうなづけるものがあります。
戦国時代には、今川義元が駿府(現在の静岡市)を繁栄させ、大内氏の山口、京都と並ぶ三大都市といわれ、さらに江戸時代にも駿府城に徳川家康が隠居したため、上方(京・大阪)、江戸(15万人)に並ぶ大都市に。
その意味ではまさに東海道の中心地だったといえるのです。
ところが、「青春18きっぷ」で静岡県を抜けたお隣、愛知県では、「愛知、岐阜、三重が東海3県で静岡は東海地方に入りません」という回答に。
名古屋の放送局が流す愛知県のローカルな天気予報は、「愛知、岐阜、三重が東海3県」の天気予報で、静岡県は含まれず、天気もほとんど紹介されません。
気象庁は、東海地方を愛知県、岐阜県、三重県、静岡県と定義していますが、名古屋の放送局、たとえば東海テレビ(フジテレビ系列の基幹局)は、愛知、岐阜、三重の東海広域圏が放送エリアで、名古屋に本社を置く東邦ガスも愛知、岐阜(飛騨などを除く)、三重(伊勢などを除く)が管轄。
つまりは静岡県は放送エリア外、管轄外で隣接県ながら意外に「馴染のない」エリアになっているのです。
静岡県内の都市ガスは、名古屋の東邦ガスでも、関東の東京ガスでもなく、静岡ガスをメインに、東海ガス、御殿場ガス、島田ガスなどが戦国時代の武将のように群雄割拠しています(静岡県の都市ガス供給会社は合計で11社もあります)。
新聞も静岡新聞がメインですが、浜松市には中日新聞東海本社が置かれて、愛知県に近い遠州エリア(静岡県西部)は中日新聞の読者も数多く存在し、さすがに東西に長い静岡県だけあって、ひとくくりにするのは難しい状況です。
電力は伊豆・沼津界隈が東京電力、それ以外は中部電力と少し複雑。
富士川を境に東側は50ヘルツ、西側が60ヘルツという周波数の違いで、富士川で電気の東西分かれ目となっています。
行政における静岡県の地域理由も省庁によって異なり、河川や道路、港、空港、ダム、公園などを担当する整備局は国土交通省中部地方整備局(静岡県、愛知県、岐阜県、三重県)、公共交通計画や観光などを担う運輸局は中部運輸局(静岡県、愛知県、岐阜県、三重県、福井県)が担当で、管轄する県は福井県を含めるかで微妙に異なりますが、中部地方という扱いに。
林野庁は関東農政局翼下の関東森林管理局(福島県、茨城県、栃木県、群馬県、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、新潟県、山梨県、静岡県の1都10県にわたる区域の国有林を管理)で、広域の関東に(福島県、新潟県、山梨県、静岡県が加わっています)。
経済産業省も同様に、関東経済産業局が、広域関東圏(1都10県:茨城県、栃木県、群馬県、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、新潟県、山梨県、長野県、静岡県)を管轄しているので「広域関東」の扱いです。
環境省も関東地方環境事務所(茨城県、栃木県、群馬県、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、新潟県、山梨県、静岡県)で、南アルプス国立公園、富士箱根伊豆国立公園を担当しています。
東海道が定められた奈良に都があった時代には、関東関西の分かれ目は鈴鹿峠だったので、静岡県は関東に、江戸時代に箱根に関所が設けられて以降は、静岡は箱根関以西ということで、関西に属しました。
歴史的、文化的、気候的、地理的と複雑な要因があり、静岡県は行政的にも関東だったり、中部だったりと分かれているわけで、何が正解とはいえないことがよくわかります。
静岡県民がよく主張する「東海どまんなか」というのも東海3県(愛知、岐阜、三重)の人からすればかなり違和感があるようです。
静岡県は何地方!? 中部、東海、それとも関東!? | |
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