令和5年に公表された総務省統計局の「令和3年経済センサス‐活動調査」と令和2年国勢調査のデータによれば、人口1000人あたりの「寿司店の数」の1位は、なんと山梨県。上位にはさすがに魚が旨いと自負する県が並んでいますが、TOPだけは意外にも海なし県に。実は甲州人はマグロに強いこだわりが!
甲府に行ったら、甲州寿司を味わいたい!
江戸時代には、魚を新鮮なまま運ぶ限界の距離を魚尻点(うおじりてん)、その流通ルートを魚尻線と呼んでいましたが、甲府はその魚尻点にあたります。
単に魚尻点ということでいえば、長野県の長野市、松本市、岐阜県の高山市、中津川市、福島県の郡山市、岩手県の花巻市、群馬県の高崎市、滋賀県の長浜市なども魚尻点に該当しますが、TOP10入りは果たせていません。
もう一つの要素が、マグロの消費量。
実は江戸時代の末期から、駿河湾ではマグロが豊富に獲れ、駿河国内で流通。
吉原(静岡県富士市)から馬の背に積んだマグロなどの魚介は、富士宮、朝霧高原を抜け、本栖湖、さらには精進湖を通り、山を越えて甲府盆地へと運ばれました(寒冷な気候のルートというメリットもありました)。
運ばれたマグロは、職人が酢で締めたり、醤油に漬け込んで漬けにしたりして、寿司となったわけです。
都道府県の県庁所在地で、寿司の消費額がトップなのは宇都宮市。
やはり、内陸なのも魚尻点としての伝統が残されているのかもしれません。
江戸時代にはマグロは今ほど人気ではなかったので、甲州の商人はマグロを買い付け、陸送して甲府へと送ったのです。
甲州名物の「煮貝」もアワビを醤油に付けて甲府へと運んだものですが、マグロはほぼ生の状態で甲府盆地へと運び入れられたため、「甲府の人にはマグロにこだわりがある」、「目利きの人が多い」という結果に。
そのため、湯村温泉、石和温泉でも地元の人の宴会には必ず質の高いマグロを出すそうです。
「なんだ、山梨県に来たのにマグロかぁ・・」と嘆くのは大きな誤解で、「山梨県だからこそ、目利きが吟味した美味しいマグロ」なのかもしれません。
富士川舟運の川湊・鰍沢河岸(かじかざわかし)で出土したマグロの骨のDNA分析から、江戸時代、甲州の人が味わっていたのはクロマグロ(ホンマグロ)だったことも判明。
「美味しいホンマグロを食べに、山梨へ」なんて人が身近にいたなら、それはかなりの食通です。
甲府市には明治30年創業の「魚そう本店」、明治43年創業の「すし処 魚保」(うおやす)もあり、シャリもネタも大きい甲州寿司の歴史を今に伝えています(江戸〜明治時代の握り寿司は、今よりもシャリもネタも巨大でした)。
マグロの上にタレがかかっているのも甲州寿司の特長です。
甲府に行ったら、ぜひ甲州寿司を、ぜひ。
寿司店密度(人口比) TOP10
順位 | 都道府県名 | 寿司店密度 (人口1000人あたり) | 寿司店数 |
1位 | 山梨県 | 0.249 | 202 |
2位 | 石川県 | 0.246 | 279 |
3位 | 東京都 | 0.200 | 2811 |
4位 | 福井県 | 0.190 | 146 |
5位 | 長崎県 | 0.187 | 245 |
5位 | 北海道 | 0.187 | 975 |
5位 | 富山県 | 0.187 | 193 |
8位 | 静岡県 | 0.181 | 657 |
9位 | 青森県 | 0.179 | 222 |
10位 | 秋田県 | 0.178 | 171 |
「寿司店」密集度 1位は、山梨県 TOP10を紹介 | |
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