【地図を旅する】vol.31 三保松原に「知られざる三保飛行場」が!

三保飛行場

富士山を仰ぐ景勝地、三保松原(みほのまつばら/静岡県静岡市清水区)。ユネスコの世界文化遺産「富士山ー信仰の対象と芸術の源泉ー」の構成資産にもなっていますが、清水灯台(美保灯台)近くに飛行場があることはあまり知られていません。これが静岡市が管理する三保飛行場です。

大正12年開場の三保根岸飛行場が前身

三保飛行場

静岡の飛行場といえば、茶畑の広がる牧之原の台地に築かれた富士山静岡空港が有名です。
FDA(JALとの共同運航)やANAの定期便が就航していますが、美保飛行場も静岡県にあるもうひとつの飛行場。
空港法の分類では場外離着陸場。

定期便などの離発着ができるのは空港で、ドクターヘリ、グライダーなどが活用できるのがこの場外離着陸場という区分があります。
航空法によれば、「航空法第79条に基づき、国土交通大臣の許可を得て、期間を限定して離着陸できる公共用・非公共用の場外離着陸場」ということに。

滑走路は全長500m、幅20m。
大正12年、根岸錦蔵(ねぎしきんぞう=気象観測隊員時代に、流氷観測のため女満別空港も開設しています)が開設した三保根岸飛行場という民間飛行場がルーツで、戦時中には清水海軍航空隊(昭和19年9月1日開隊)の飛行場となっています。
根岸錦蔵が三保松原に飛行場を築こうと考えたのは、大阪〜東京間の航路途中で、不時着できる飛行場が必要と考えたから。
そして、飛行機で魚群を見つけ、位置情報を通信筒に入れて漁船に投下するという魚群捜査(カツオ、マグロの探索)にも活用したのです。
さらに気象台の三保測候所の嘱託となり、当時としては珍しい飛行機による高層気象観測も行なっています(富士山測候所は昭和7年開設)。

もっとも利用の多かった昭和50年代には、水難事故防止パトロールや赤十字飛行隊の飛行訓練で年間1200回程度の使用があったので、まさに飛行場だったことがよくわかります。

何よりも注目はそのロケーション。
三保半島の先端部、海岸沿いに茂る三保松原の外側(海岸側)の砂地に滑走路が築かれています。
しかも清水灯台(美保灯台)の隣接地で、三保半島ではいちばん富士山の眺望に優れた場所です。

かつては赤十字飛行隊の訓練飛行場として、日本飛行連盟が管理していましたが、荒廃が進んだため、令和7年7月から静岡市に移管されています。

景観的にいえば日本一ともいえる絶景の飛行場ですが、難点は、海岸に近く海風をまともに受けること。
砂の浸食が進行し、滑走路のひび割れが随所にあるので、現在利用可能なのは300mほど。
飛行計画の申請先は東京航空局東京空港事務所ですが、近年では実際にフライトに使われたことはありません。

静岡市はヘリコプターなど、垂直離着陸機の利用を想定していますが、格納庫や電気・水道設備、給油機能もないため、ヘリコプターの利用も足踏み状態です。
静岡市は「次世代エアモビリティなどの産業振興、地域振興等に利活用」としており、ドローン開発のテスト飛行、防災訓練や救助訓練、地域振興に資するイベントなどを想定しているとのこと(利用計画の申請を受け付け中です/利用料金も当面の間は無料)。

【地図を旅する】vol.31 三保松原に「知られざる三保飛行場」が!
名称三保飛行場/みほひこうじょう
所在地静岡県静岡市清水区三保
関連HP静岡市公式ホームページ
ドライブで東名高速道路清水ICから約12km
駐車場あり/無料
掲載の内容は取材時のものです。最新の情報をご確認の上、おでかけ下さい。
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ラジオ・テレビレジャー記者会会員/旅ソムリエ。 旅の手帖編集部を経て、まっぷるマガジン地域版の立ち上げ、編集。昭文社ガイドブックのシリーズ企画立案、編集を行なう。その後、ソフトバンクでウエブと連動の旅行雑誌等を制作、出版。愛知万博公式ガイドブックを制作。以降、旅のウエブ、宿泊サイトにコンテンツ提供、カーナビ、ポータルサイトなどマルチメディアの編集に移行。

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