サイトアイコン ニッポン旅マガジン

国宝・三重塔 全13塔完全ガイド

釈迦の舎利(遺骨)を収める仏塔のひとつが三重塔。仏教の世界観である涅槃の境地を象徴するストゥーパ(サンスクリット語: stūpa)に由来し、インドから中国に伝わって「卒塔婆」という字が当てられ、楼閣建築の形式が取り入れられて高層化。日本国内には国宝に指定される三重塔が13塔あります。

五重塔とは何が違う!?

天台宗の寺に三重塔が多いのは天台宗で説く3つの真理「三諦円融思想」に由来するともいわれていますが定かでありません。

「三諦円融思想」とは、空諦(くうたい=一切存在は空である)、仮諦(けたい=一切存在は縁起によって仮に存在する)、中諦(ちゅうたい=一切存在は空・仮を超えた絶対のものである)のこと。
天台宗の「百科全書」ともいわれる『溪嵐拾葉集』には「三重塔は南天の鉄塔なり」とあるので、そのルーツはどうやら「南天の鉄塔」にあるようです。
真言宗でも、高野山の壇上伽藍に空海が根本大塔を建立する際に、「南天の鉄塔」を模したとされています(ただしこちらは二重塔)。

「南天の鉄塔」とは、南インド(南天竺、南天)にあったといわれる仏塔で、これが密教のシンボルタワー的な存在(鉄塔いえども実は大理石製だったようです)。

明通寺三重塔

所在地:福井県小浜市門前5-22
塔高:22.12m
建築年:文永7年(1270年)/鎌倉時代
備考:初層に拳鼻(こぶしばな=手の拳を横から見た時に似た装飾彫刻)が施され、塔に拳鼻を用いた最古例となっています

明通寺

大同元年(806年)、征夷大将軍・坂上田村麻呂(さかのうえのたむらまろ)の創建と伝えられる古刹が福井県小浜市の明通寺(みょうつうじ)。鎌倉・室町時代には幕府の帰依を受け、25の子院を擁していたという若狭の名刹です。鎌倉時代中期築の本堂と三重

安楽寺八角三重塔

所在地:長野県上田市別所温泉2361
塔高:18.75m
建築年:1290年代/鎌倉時代
備考:日本最古の禅宗様建築

安楽寺

長野県上田市、「信州の鎌倉」と呼ばれる塩田平・別所温泉にある曹洞宗の古刹が安楽寺(あんらくじ)。鎌倉時代、臨済宗の僧・樵谷惟仙(しょうこくいせん)中興で、禅寺として信州最古の寺。鎌倉時代中期にはすでに鎌倉の建長寺に相当する大規模な寺となり、

大法寺三重塔

所在地:長野県小県郡青木村当郷2052
塔高:18.38m
建築年:正慶2年(1333年)/鎌倉時代
備考:美しさのあまり思わず振り返る「見返りの塔」という名も

大法寺

長野県小県郡青木村にある天台宗の古刹が大法寺。8世紀初頭、律令時代の始まりとともに、朝廷と東国を結ぶ令制東山道(りょうせいとうざんどう)の浦野駅(うらののうまや=現・青木村当郷の浦野駅跡公園)が近くにあったこともあり、その駅寺だったと推測で

西明寺三重塔

所在地:滋賀県犬上郡甲良町池寺26
塔高:20.1m
建築年:鎌倉時代
備考:金剛輪寺、百済寺とともに「湖東三山」のひとつ

西明寺

百済寺(ひゃくさいじ)、金剛輪寺と並んで、湖東三山のひとつ。承和元年(834年)、仁明天皇の勅願により三修上人が開山と伝えられる天台宗の古刹が滋賀県甲良町の西明寺。古来から祈願道場、修行道場として知られ、源頼朝がわざわざ立ち寄って戦勝祈願を

常楽寺三重塔

所在地:滋賀県湖南市西寺6-5-1
塔高:22.8m
建築年:室町時代
備考:長寿寺、善水寺とともに「湖南三山」のひとつ

常楽寺|湖南三山

滋賀県湖南市石部地区にある天台宗の古刹が常楽寺。長寿寺、善水寺とともに湖南三山のひとつ。寺伝によれば、和銅年間(708年〜715年)、元明天皇の勅願で良辨(ろうべん=良弁、東大寺を開山、大仏建立)によって創建されたと伝えられています。紫香楽

浄瑠璃寺三重塔

所在地:京都府木津川市加茂町西小札場40
塔高:15.3m
建築年:平安時代(藤原期)築・治承2年(1178年)に浄瑠璃寺に移築
備考:寺名は薬師如来のいる東方浄土「東方浄瑠璃世界」に由来

浄瑠璃寺

天平11年(738年)、行基開山と伝えられる古刹が京都府木津川市の浄瑠璃寺(じょうるりじ)。永承2年(1047年)、義明上人が、薬師如来を本尊に小さな堂を建立。保元2年(1157年)に現在の本堂(九体阿弥陀堂)が建てられています。寺名は薬師

一乗寺三重塔

所在地:兵庫県加西市坂本町821-17
塔高:21.8m
建築年:承安元年(1171年)/平安時代
備考:西国三十三所第26番札所。伏鉢(相輪下部の半球状の部材)の銘で建築年が判明

一乗寺

兵庫県加西市にある天台宗の古刹、法華山一乗寺(いちじょうじ)。寺伝によれば白雉元年(650年)、孝徳天皇の勅願で法道仙人が開基したと伝えられます(法道仙人は「インドから紫雲に乗って飛来」したと伝わる伝説の渡来僧)。西国三十三所第26番で、本

法起寺三重塔

所在地:奈良県生駒郡斑鳩町岡本1873
塔高:23.9m
建築年:慶雲3年(706年)頃/飛鳥時代
備考:飛鳥時代末期築、現存する日本最古の三重塔

法起寺・三重塔

法起寺は、天平時代の記録に池後尼寺とあることから、もともとは尼寺として創建されたことがわかっています。伽藍配置は、塔を東に、金堂(現在の聖天堂の場所にあった)を西に配したもので、法隆寺西院伽藍とは逆の配置となっています。国宝に指定された三重

薬師寺東塔

所在地:奈良県奈良市西ノ京町457
塔高:34.1m
建築年:天平2年(730年)/奈良時代(天平年間)
備考:世界文化遺産「古都奈良の文化財」の構成資産。一見すると六重塔に見えますが、屋根と屋根との間に入っているのは裳階(もこし)と呼ばれる庇(ひさし)

薬師寺・東塔

薬師寺・東塔は、730(天平2)年に造営されたと伝わる三重塔。高さ33.6mで各層に裳階(もこし)を付けているため六重に見えるのが特徴。薬師寺は、数度の災害と1528(享禄元)年の兵火により多くの堂宇は焼失していますが、東塔は当時の建造物で

當麻寺東塔・西塔

所在地:奈良県葛城市當麻1263
塔高:東塔24.4m、西塔25.2m
建築年:東塔=奈良時代末期、西塔=平安時代初期
備考:創建当時の東塔、西塔が現存する唯一の例

當麻寺・東塔

奈良県葛城市にある行基の道場をルーツとする古刹で、中将姫ゆかりの『當麻曼陀羅』(たいままんだら)を本尊とする真言宗・浄土宗二宗の寺が、當麻寺。古い時代の東塔(とうとう)と西塔(さいとう)が現存する唯一の遺構で、とくに東塔は奈良時代末(729

當麻寺・西塔

奈良県葛城市にある行基の道場をルーツとする古刹で、中将姫ゆかりの『當麻曼陀羅』(たいままんだら)を本尊とする真言宗・浄土宗二宗の寺が、當麻寺。古い時代の東塔(とうとう)と西塔(さいとう)が現存する唯一の遺構で、西塔は東塔より少し遅れた平安時

興福寺三重塔

所在地:奈良県奈良市登大路町48
塔高:19.1m
建築年:鎌倉時代前期
備考:世界文化遺産「古都奈良の文化財」の構成資産、興福寺五重塔は国の重要文化財

興福寺・三重塔

興福寺の三重塔は、1143(康治2)年、崇徳天皇(すとくてんのう)の中宮・藤原聖子(ふじわらのきよこ=皇嘉門院聖子/こうかもんいんせいこ)が創建し、1180(治承4)年、平重衡の兵火で焼失後、間もなく再建されたもので、北円堂とともに興福寺で

向上寺三重塔

所在地:広島県尾道市瀬戸田町瀬戸田57
塔高:19.52m
建築年:1432年(永享4年)/室町時代
備考:室町時代、将軍・足利義政により将軍祈願所に

向上寺

広島県尾道市瀬戸田町、生口島(いくちじま)の聴音山公園の一角にある曹洞宗の寺が向上寺(こうじょうじ)。応永7年(1400年)、土地の地頭(じとう)・生口守平(いくちもりひら)が建立した禅寺で中国三十三観音霊場の11番札所。ほとんどの伽藍は明

国宝・三重塔 全13塔完全ガイド
掲載の内容は取材時のものです。最新の情報をご確認の上、おでかけ下さい。

日本三名塔とは!?

全国の五重塔のなかで国宝に指定される塔は9塔、国の重要文化財に指定は13塔あります。さらに三重塔に国宝13塔、重要文化財43塔、多宝塔に国宝6塔、国の重要文化財35塔を数えます。そのなかで選ばれる「日本三名塔」は、法隆寺(奈良県斑鳩町)、醍

国宝・五重塔 全9塔完全ガイド

下層から地(基礎)、水(塔身)、火(笠)、風(請花)、虚空(宝珠)を意味する5層の屋根からなる五重塔。まさに仏教的な宇宙観を表すタワー(塔)で、そそり立つ姿は宇宙との交信タワーとも思われます。世界最古の木造五重塔の法隆寺・五重塔を筆頭に、

国宝・阿弥陀堂 全8堂完全ガイド

阿弥陀如来を本尊とする仏堂が阿弥陀堂。阿弥陀堂のルーツは、天台宗の常行堂(常行三昧堂)で、修行のための堂ですが、平安時代の末期、末法思想を背景にした浄土信仰の広まりで、阿弥陀仏の住む極楽浄土を表現する堂として多くの阿弥陀堂が築かれました。そ

斑鳩三塔とは!?

奈良県生駒郡斑鳩町(いかるがちょう)にある法隆寺・五重塔(現存世界最古の木造五重塔で国宝)、法起寺・三重塔(三重塔としては日本最古で、国宝)、法輪寺・三重塔(昭和50年の再建)という聖徳太子とその一族ゆかりの仏塔が、斑鳩三塔(いかるがさんと

 

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

最新情報をお届けします

Twitter でニッポン旅マガジンをフォローしよう!

モバイルバージョンを終了