五重塔、三重塔というのは聞き慣れた言葉ですが、二重塔とはいいません。二重になった塔は、多宝塔と称されているからです。全国各地の寺の境内にある多宝塔のなかで国宝になっているのは6塔で、五重塔(9基)、三重塔(13基)と比べても少し少ない貴重な存在となっています。
多宝塔の定義とは!?
日本の仏塔の建築様式で、下層が方形、上層が円形の二重塔のことを多宝塔と呼びます。
宝形造(四角錐形)の屋根を有す塔であることから、宝塔とも呼ばれますが、一般的には多宝塔で、国宝の指定名称、現地での呼称も多宝塔がほとんどです。
釈迦が霊鷲山で法華経を説法していると多宝如来(法華経に登場する、東方の宝浄国の教主)の塔が湧出したという話が、そもそもの由来です。
最澄は法華経千部を安置する塔として全国6ヶ所に建立した多宝塔は、下層も上層も方形でしたが、現存していません(叡山延暦寺にある法華総持院東塔は昭和55年の再建で、下層・上層ともに方形)。
国の重要文化財に指定される多宝塔は全国に30以上もありますが、国宝となっているのはわずかに6塔にすぎません。
しかもそのすべてが西日本です。
石山寺・多宝塔|滋賀県
所在地:滋賀県大津市石山寺1-1-1
塔高:17.2m
建築年:建久5年(1194年)/鎌倉時代
備考:下層が方形(四柱造)、上層は円形の平面を持ち、屋根は宝形造(ほうぎょうづくり)の檜皮葺き(ひわだぶき)
均整のとれた優美な塔は「日本一美しい多宝塔」とも
慈眼院・多宝塔|大阪府
所在地:大阪府泉佐野市日根野626
塔高:10.5m
建築年:文永8年(1271年)/鎌倉時代
備考:天武天皇の勅願寺として創建という古刹
石山寺、高野山・金剛三昧院の多宝塔とともに、多宝塔の三名塔のひとつ
金剛三昧院・多宝塔|和歌山県
所在地:和歌山県伊都郡高野町高野山425
塔高:14.9m
建築年:貞応2年(1223年)/鎌倉時代
備考:高野山金剛峯寺の塔頭(たっちゅう=支院)のなかで唯一、世界文化遺産「紀伊山地の霊場と参詣道」の構成資産になっている寺
尼将軍と称され、鎌倉幕府の実権を握っていた北条政子が建立
寺は、源頼朝の菩提を弔うために創建され、3代将軍・源実朝(みなもとのさねとも)の菩提のために改築
長保寺・多宝塔|和歌山県
所在地:和歌山県海南市下津町上689
塔高:13.4m
建築年:延文2年・正平12年(1357年)/南北朝時代
備考:紀州徳川家の菩提寺で、5代・吉宗、13代・慶福を除く藩主の霊廟も
本堂、多宝塔、大門はいずれも国宝
根来寺・大塔|和歌山県
所在地:和歌山県岩出市根来2286
塔高:37m
建築年:天文16年(1547年)/室町時代
備考:日本最大の多宝塔で、唯一大塔方式を伝える塔
国宝の指定名称は、根来寺多宝塔(大塔)
浄土寺・多宝塔|広島県
所在地:広島県尾道市東久保町20-28
塔高:20.5m
建築年:嘉暦3年(1328年)/鎌倉時代
備考:尾道の富豪、沙弥道蓮(しゃみどうれん)・比丘尼道性(びくにどうしょう)夫妻が建立
海運業者だったのではないかと推測されています
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