桜島の北、錦江湾に知られざる海底火山が! 噴火の可能性は!?

「東洋のナポリ」といわれる鹿児島市。錦江湾越しに桜島を眺望しますが、その桜島から北の錦江湾はもともと姶良カルデラ(あいらかるでら)という火山の爆発で誕生した凹地。その姶良カルデラのなかに、二重カルデラとして若尊カルデラ(わかみこかるでら)があり、気象庁選定の活火山になっています。

今も海底からは熱水などが噴出している

気象庁が選定する全国111の活火山ですが、その定義は、「過去1万年以内に火山活動があったもの」。
気象庁、火山噴火予知連絡協議会が「若尊」(わかみこ)として活火山に認定するのは、錦江湾北部、若尊鼻の先にある海底火山です。

実はこの活火山・若尊、地元、鹿児島県民でも知る人は少なく、地元のメディアですら取り上げられることのない、忘れ去られた活火山、ノーマーク火山なのです。
南側の桜島があまりに有名で、爆発の危険性が高まりつつある常時観測火山であるため、灯台下暗し状態になっているのかもしれません(マグマ溜まりは桜島と関連している可能性もありますが)。

活火山・若尊は、2003年に気象庁、火山噴火予知連絡協議会の活火山見直しが行なわれたことで、新たに仲間入りした火山です。
鹿児島のシラス台地を生み出した2万5000年前の大規模な入戸火砕流噴火(いとかさいりゅうふんか)噴火地点とも推定され(その火山灰がシラス)、爆発後の山体崩壊で直径10kmほどのカルデラを形成しています。

若尊カルデラの南部から西部にかけての外輪山は海底に水没していますが、北部から東部は陸上(海岸線)にあります(北部は河川の堆積で平野に)。
カルデラの東側斜面(海底)には高さ100mの溶岩ドーム状の火山がありますが、山頂部が水深75mに位置するため、目にすることはできません。

気象庁の活火山の定義となる「過去1万年以内に噴火」ですが、この若尊に限っては、明確な証拠はありません。
それでも活火山に認定されたのは、地元の漁師が「たぎり」と呼ぶ現象を確認しているから。
これは海が煮えたぎったようになることから付いた名で、火山性のガスや熱水の噴出がある裏付け、つまりは火山活動の証拠になっているのです。

海底火山の若尊のある海域を見渡す若尊鼻には若尊神社(わかみこじんじゃ)が建っていますが、神武天皇の東征伝説の出発点、そして日本武尊の熊襲(くまそ)討伐時の上陸地点とも伝えられ、若い尊(みこと)が船出、上陸の地という伝説が、地名の由来、そして火山の名になっているのです。

若尊カルデラ外輪山北側の霧島市国分広瀬に鎮座する大穴持神社(おおなむぢじんじゃ)は、噴火の鎮静を願って創建されたと伝えられる古社。
平安時代初期に編纂された勅撰史書『続日本紀』(しょくにほんぎ)の天平宝字8年(764年)12月の記事に、噴火によって3つの島が誕生したとあり、それに続けて宝亀9年(778年)12月、「神造島に大穴持神を祀った」と記されているので、奈良時代には海底火山の噴火があったことがわかります。

江戸時代の史書『三国名勝図会』などによると大穴持神社はもともと沖の宮洲という浅瀬にあったものの、島が水没したため現社地に遷座したと記されており、この旧社地も海底火山の活動を裏付ける内容になっているのです。

岡山大学・山中寿朗准教授らのチームは、2007年〜2015年に海底から湧出するガスの組成を分析。
2015年にはマグマに由来する二酸化炭素の海中での推定放出量が急増したことを受け、「活火山若尊は噴火活動への注意が必要なレベルに達しているかも知れず、今後の観測の継続が重要」と発表しています。

ただし、海底活火山が噴火しても海水が衝撃を吸収し、通常の火山に比べ被害は限定的とのこと。
現在の火山活動は、熱水の噴出くらいですが、火山活動が活発化する可能性もあるので、活火山であることを覚えておく必要があるということに。

若尊鼻
若尊鼻の若尊神社から桜島を眺望(眼前の海に海底火山が!)
桜島の北、錦江湾に知られざる海底火山が! 噴火の可能性は!?
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